つぐない
とあるβテスター、待ち合わせる
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そろ宿を出て、迷宮区に向かう準備をしないと。
メニューを開いてアラームを見ると、準備ついでの散歩に向かったシェイリと落ち合う予定の時刻まで、あと20分といったところだった。
準備といっても、部屋着から戦闘用の装備に着替えるのはショートカットコマンドをいくつか押すだけで済んでしまうので、表の道具屋でポーション類を補充するくらいしかやることはなかったりするのだけれど。
とはいえ、今のSAOでは回復アイテムをきちんと用意しているか否かが生死の分かれ目となるので、念の為、回復アイテムのチェックには少し多めに時間を割くようにしている。
いざという時、結晶アイテムの補充を忘れていたなんてことにならないように、最低でも転移結晶だけは所持していることを確認してからでないと狩りには行かない。というより、怖くて行けない。
モンスターとの戦闘によって犠牲になったプレイヤーの中には、転移結晶を使い切っていることを忘れて事故死してしまった人もいるという話だ。
最近は攻略が順調に進んでいるからか、そういった気の緩みともとれるミスが原因で死亡するプレイヤーが目立つようになってきている……らしい。
アルゴが提供している情報紙『ウィークリーアルゴ』の紙面に、わざわざ注意書きが掲載されるほどだ。
そういった事例もあるので、僕は迷宮区に行く前に必ず転移結晶の数をチェックし、余裕があれば一つか二つ余分に持ち歩くようにしている。
自分で使う分の他に、万が一パーティの誰かが結晶を持っていなかった時に渡せる分は確保しておきたいという理由からだ。
少し神経質に見えるかもしれないけれど、迷宮区の攻略には文字通り命を懸けているのだから、用心するに越したことはないだろう。
……それに。
ルシェと初めて出会った時のようなことも、これから先、ないとは限らない。
あの時は第2層のモンスターが相手だったから、僕一人でも助けることができた。
だけど、あれが僕のレベルと同等か、あるいは格上のモンスターだったら。彼女を助けようとすれば、僕も無事では済まなかっただろう。最悪の場合、共倒れになっていた可能性だってある。
もちろん、転移結晶を使えば自分は助かっただろう。だけど、目の前でやられそうになっている人を見捨てられるほど、僕は非情になりきれそうもない。
あんなことはそうそうあって欲しくはないけれど、もしもまた、ああいう場面に遭遇した時のために、少しでも保険をかけておきたいという気持ちがあった。
偽善……なのかもしれないけれど。
「……よし」
ちゃんと転移結晶を所持していることを確認し、アイテムウィンドウを閉じた。
ポーション類も思っていたほど減っていなかったので、今日の探索はこのまま行っても問題ないだろう。
続いてショートカットコマンドを操作し、装備を
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