外伝:俺達はいつだって
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手を翻弄出来る代わりに防御力は紙のように低く、さらには火力が低いので敵を倒すのにとても時間がかかる。そういう育成だ。
「ぶっちゃけですね……もうキツイっす。韋駄天気取りで今まで速度にばかり傾倒してたし、誰より早く動けるのは俺の誇りだったんですけど……火力が低すぎて、周囲と足並みが揃わないんですよ。レアドロップで持たせてはいましたが、この前みんなに、その、『お前がそのまんまのスタイルを続けるんならもう組まない』って……」
「まぁ妥当だよな。足手纏いは後ろで大人しくしてたほうがいい。互いの為にならないものな」
「そ、そんなっ!!俺は今まで攻略組の一人としてメチャクチャ頑張って来たんですよ!?出来ることだってまだあるし、もっと速く動きたい!こんなの納得できないんですよ!」
少年は眉を八の字にして抗議する。俺は非力だという自覚しかなかったので後ろに下がることに躊躇いはないが、ずっと戦い続けていた彼にその言葉は受け入れきれないものだったらしい。少々無神経な物言いだったな、と反省する。
「あー……すまん。俺は本当の意味で戦えないけど、お前はまだ戦えるもんな。そりゃ志半ばで爪弾きは納得できな――」
「――本当は、分かってるんです。なのに認めたくなくて飛び出してきちまった」
「認めたくなかったって……足手纏いになってる事を?」
「……いえ、実はそれよりももっとキツイ事言われたんです……はは……」
消え入るような小さな声で俯いた少年が呟く。
足手纏いよりも堪えた仲間からの一言は、彼の気勢を挫くには十分すぎる物だった。
『スピードはもう足りてるんだ!なのに無駄にAGIにばっかり振りやがって!ゲーム感覚で前線を引っ掻き回すのはもうやめろ!今のお前の代わりが出来る奴なんか幾らでもいるんだよ!!』
自己満足の育成には意味がない。ただ速さだけならば一極でなくとも事足りている。なのに速さだけに傾倒するのなら、それは役立たずに他ならない。必要な速さをオーバーして必要な火力が圧倒的に足りないのでは一緒に行動しても無駄が多くなる。
恰好付けの目立ちたがりは迷惑――確かにそうかもしれない。まして貢献度が低いとなれば言い逃れも出来ない。それが自身の憧れたスタイルであったなら、それを否定された彼の心境は計り知れないものがあるだろう。
仲間は『他の奴にも出来る』と言ったのだ。彼のもっとも夢中になる戦い方、それに到るまでの過程と努力、存在価値。全てが否定されたようなものだ。
「俺、出来るなら今のまま速さの限界に挑みたいです。正直、言われた瞬間に『これを止めたら俺は俺じゃなくなる』って拒否したかった。でもあいつらはずっと一緒にこのクソみたいなゲーム内でやってきた戦友だ。期待を裏切りたくない………俺自身も限界は感じているんです。かといって今更どんな道
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