番外24話『大丈夫』
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「……そっか、ありがとな」
体は黒焦げ、視線も少し弱い。肩で息をしていて、どこか苦しそう。どう見ても万全の状態ではなく、どこか弱々しい。そのはずなのに、なぜか雄々しさがある。エネルがナミを話をしている隙に攻撃するなりをしないのはそのせいだろう。
ゆっくりとナミから視線を外し、エネルへと再度顔を向けるハントはどっしりと腰を落とし、魚人空手陸式の構えをとってからエネルへとまっすぐに言葉を向けた。
「さぁ、エネル……今度こそお前をブッ飛ばす。覚悟しろよ?」
ハントがエネルの雷を受けたのはこれで2度。2度だ。前日のものまで含めば実に3度目。雷の直撃を3度受けて生きていられる人間などいない。いないはずなのに、エネルの目の前の男は死者とは思えないほどに悠然とそこに存在している。
真っ直ぐに叩き付けられたハントの言葉で、エネルは遂に悟った。
ハントと対峙してから覚えていた、ゴロゴロの実を食して以来味わうことのなくなっていた感覚。久しぶり過ぎて、それをただ与える側の象徴として存在していたため、思い出すことの出来なかったその感覚をエネルは遂に思い出したのだ。
ハントに向けられた視線に、視線で返すことが出来ない。
向けられた気迫に、体がなぜか震える。
どこか独特の、空手を思わせるハントの態勢に、気圧される。
――まさか……私が恐怖しているのか。
エネルが思い出したのは、恐怖という感覚。ここに至って気づかずにはいられなかったその感覚に、けれどエネルの神として君臨してきたプライドがそれを認めるこを許さない。
――そんなことが……あってたまるか!
「私は神だ! 神なのだ!」
「……それで?」
振り絞るように吐き出した、どこか怨嗟すら感じられるほどの声色に対して、ハントは深い呼吸を繰り返しながら平然と首を傾げて見せた。
これで2度目の対峙となるわけだが、1度目の対峙した時とまるで変わらない態度。仕留めきれてはいないが、それでも何度も痛い目にあわせているはずなのに、それらを一切感じさせないほどに落ち着いたハントの態度が、さらにエネルの恐怖という怒りを煽る。
「この……この……この不届き者めがっ! 2億V雷神!」
癇癪を起こす子供を彷彿とさせる声色で、エネルが最後の切り札を。
その姿はまさに雷神。
全身を巨大な雷へと姿を変えて、まさに雷神のごとく姿となってハントを睨み付ける。
全長10m以上の、どこに触れても2億Vが流れ込んでくるという強力極まりない技だ。雷神となったエネルから漏れてくる雷の熱量に圧されて近づくことすら容易ではない。
体が自然と離れようとしてしまうナミを、ハントは守るように一層に身を深く沈みこませる。
「……大丈夫だからな」
「……っ…
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