番外24話『大丈夫』
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なにもかも、エネルの掌の中だった。
力が抜けて、腰が自然と地面に落ちていた。それにも気づかずに、ただナミは体を震わせ、瞼を震わせて、声を震わせる。
「……ハン……ト」
返事はない。
当然だ。
それでもナミは呼ばずにはいられなかった。
彼女を庇った時のハントは既に黒く焦げていた。それはつまり、既にエネルの一撃をその身に受けていたということだ。それでもここまでたどり着いたこと自体は驚嘆に値するのだが、いかんせん2度目の雷を受けてしまってはどうしようもない。
絶対にブッ飛ばすと笑顔で言っていたハントは、一度エネルの一撃を受けても諦めずにここにまで来ていた。エネルが慌てていたのはきっとハントに少なからず苦戦していたから。賢明なナミだからこそ、ありとあらゆる情報を理解してしまい、だからこそ一つの結論にたどり着く。
――私の……せいで?
ナミを守ろうとして2撃目を受けてしまった。
いくらハントでももう耐えきれるわけがない。
「ハ、ン……トぉ」
すがるようなナミの声を、無慈悲に引き裂いたのは当然エネル。
「ヤハハハハ! 無駄だ! 神の裁きを2度も受けて生きていられるものか!」
余程、彼の思惑通りにハントを仕留めることが出来て愉快なのだろう。高笑いと、そしてそれ以上の確信を込めて、エネルは言う。
「ヤハハハハハ! 今度こそ私の天下だ! ……貴様にも、後を追わせてやる」
上機嫌にナミを睨み付けて右腕を構えた時、しかしエネルの表情が瞬時に氷点下へと凍り付くこととなった。
「……?」
睨み付けらたナミはビクリと背筋を震わせて一歩後退したものの、すぐにその変化に気付いた。エネルの視線を追いかけて後ろを振り向く……いや、振り向こうとしたところで突如として彼女の頭に優しい手が置かれた
「わ」と反射的に驚きの声をあげたナミだが、もちろん、この手の感覚をナミは知っている。
「誰に……誰の後を追わせるって?」
「ば……ばかな」
エネルの表情が歪み、それとは逆にナミの表情が一気に明るくなる。
ナミの頭に手を置いた彼。エネルの表情を一気に冷めさせた彼は今にもくたびれそうな表情で言い放つ。
「指一本も……ナミには触らせないからのこのバカミナリ野郎が」
どこか穏やかで彼らしい表情とは裏腹に、彼の視線はエネルを冷たく鋭く、ただひたすらに射ぬいていた。
「っ」
「ハントっ!」
エネルの唾を飲む音と同時、ナミは今にも泣きそうな声でその名を呼ぶ。その声に反応したのか、ハントは先ほどナミの目に映った時よりもさらに黒焦げとなった体でナミへと僅かに頭を下げた。
「ごめん、怖かったよな?」
「ちょっと……でもアンタのこと信じてたから」
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