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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十四話 ヴァルハラへ
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つもりだ」
驚いてエーリッヒを見た。リューネブルク中将、オフレッサーも驚いている。視線を受けてエーリッヒがちょっと困ったような表情を見せた。

「ヴァレンシュタイン、卿の才能はこれからの帝国に必要だろう」
「もう関わりたくないんです、軍にも政治にも。今回の内乱で嫌になりました」
「……少し疲れたのではありませんか」
リューネブルク中将の言葉にエーリッヒは首を横に振った。
「違います、自分が嫌になったんです。人間、勝つ事ばかり考えると際限なく卑しくなるというのは本当だと実感しましたよ、もう沢山です」
しみじみとした口調だった。

リューネブルク中将、オフレッサーが痛ましそうな眼でエーリッヒを見ていた。エーリッヒは疲れている、その事を憐れんでいるのだろう。そしてブラウンシュバイク公達がエーリッヒを放すとも思えない、その事も憐れんでいるに違いない。エーリッヒも心の何処かでは無理だと思っているだろう。

「……それで、民間に戻って如何するのだ?」
オフレッサーが問い掛けるとエーリッヒはちょっとはにかむ様な表情を見せた。
「本を一冊書こうと思っています」
本? 弁護士じゃないのか?

「今回の内乱を単なる権力争いという位置付けで終わらせたくないんです。この内乱が起きた一因にはこれまで抑圧されてきた平民、下級貴族の怒りが有ったと思います。ラインハルト・フォン・ローエングラムはその怒りの体現者だった。彼はその抑圧を解消しようとしたのだと思います。ローエングラム侯の登場は偶然じゃない、必然だったんです。彼が現れなくても他の誰かが同じ事をしたでしょう」
「……」

オフレッサー、リューネブルク中将が頷いている。二人ともローエングラム侯とは敵対した。しかし同じ怒りは有るだろう、ブラウンシュバイク公爵家に仕えたとはいえ俺にも無いとは言えない。そしてエーリッヒ、彼も両親を殺された。その抑圧の犠牲者だった。エーリッヒがローエングラム侯と戦う事を不本意と思ったのもそれが有るからだろう。

「この内乱が終ればローエングラム侯は反逆者として排斥されます。まともな評価などされる事は無いでしょう。だから自分がその辺りを記しておきたいと思います」
「その本が出版されたら是非読みたいものだ」
オフレッサーの言葉にリューネブルク中将が“読むのですか? 本当に?”と冷やかしオフレッサーが“馬鹿にするな”と抗議した。エーリッヒが笑う、俺が笑う、そしてリューネブルク中将とオフレッサーも笑った。その本が出版されれば名著として評価されるだろう、出版されればだが……。




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