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魔法少女リリカルなのは ―全てを変えることができるなら―
第九話
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人は知っていた。
「う、うん……わかってるんだけど……」
何に対して落ち着きを失っているのか、ここ最近の彼女の言動を知っている二人はすぐに悟った。
「朝我くん、今日は一人で出かけたみたいだね」
なのはの言葉に、フェイトは全身を大きく震わせ、無言で頷いた。
図星を突かれたフェイトはため息を漏らした。
「なんで一人で出かけんだろうとか、どこに行くのかとか、どうしても気になっちゃって……」
本音を漏らすと、なのはとはやては彼女の心配性に呆れ混じりの苦笑を漏らした。
「まぁ気持ちは分からんでもないんやけど」
「そうなんだよね〜」
紅茶を口に含みながら、なのはとはやては深く頷く。
フェイトほどではないが二人も朝我のことが気になっていた。
思考の片隅に彼がふと現れ、そして氷のようにすっと消えていく。
それ故になぜ登場してきたのか気になり、一度気にしたら最後、心の奥がモヤモヤするような感覚に囚われた。
それだけの強い存在感は、出会った最初の頃からあった。
――――八年前、高町 なのはは任務中の事故で長期の入院生活を送った。
当初は魔導師として空を飛ぶこともできない恐れがあるほどの重症で、周囲には気にしていないと言う笑を浮かべつつも、心の中では叫びたいほどの絶望感を味わっていた。
そんなある日、隣の病室に一人の少年が運ばれてきた。
それが朝我 零だった。
自分とほぼ同年代の人と言うこともあり、気になって病室を覗いてみたなのはは、彼の姿を一目見た時から衝撃を受けた。
心臓を鷲掴みにされ、全身を鎖で縛られたような痛み、苦しみ、束縛感。
恐怖に近い衝撃と、そしてどこか懐かしい感覚を、なのはは感じた。
声をかけたのはきっと、その感覚の正体を知りたかったから。
彼は自分が記憶喪失なのだと語り、独り身の彼とは親身に付き合った。
そうすることでなのはは、自分の置かれた状況に対する不安や恐怖を和らげたのだ。
効果は思った以上に出た。
それは彼が、なのはの心情や思考を読んでいるのではないか思うほど気が利いた言動を取るからだった。
色んなことを質問してきても、デリケートな所には触れないようにし、逆に気にして欲しいと思った所は積極的に手を出してきた。
自動販売機に向かおうとすれば必ず車椅子を押してくれ、飲みたいものが届かない位置にあればすぐに押してくれた。
それは後になのはとの繋がりの中で出会ったフェイトとはやて達にも起こったことだった。
現在では普通に立って歩いている八神 はやてだが、十年ほど前までは生まれてからずっと車椅子に乗らないと移動ができない生活を送っていた。
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