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カプリコーン
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第一章

                          カプリコーン
 パンは神だが変わった姿をしている。
 一見して愛嬌のある鳥の巣を思わせる赤髪の少年だがその頭には山羊の小さな角がある。
 そして太腿から下は山羊の脚で蹄まである。音楽が好きで常に笛を吹いている。
 その彼にだ。父である商業と泥棒の神ヘルメスがだ。こう誘ってきたのである。
「今度オリンポスの神々が集ってだ」
「そして宴会をするんだね」
「そうだ。それでその宴会にだ」
 我が子を見ながらだ。ヘルメスはこう話す。
「音楽が必要だが」
「で、僕の笛だね」
「そうだ。吹いてくれるか」
「宴会だから御馳走が出るよね。お酒も」
「それに可愛い娘達も一杯いるぞ」
 パンの女好きを知ってだ。ヘルメスはこのことも話した。
「だからだ。来るな」
「勿論だよ。美味しい御馳走とお酒があって」
「しかも女の子がいればだな」
「おまけに笛を吹いて楽しんでもらえるなんて最高じゃない」
 パンは満面の笑みで父に返す。彼にとってはいい条件ばかりだった。
「じゃあ絶対に行くから」
「ではだ。共に行こう」
「うん、宴にね」
 こう話してだ。パンはその宴に父神と共に行くことになった。その宴はだ。
 オリンポスの神々が全て集りそのうえで用意されたテーブルの上の美酒や馳走を飲み食いしていく。そして集めて来たニンフ達と戯れ合う。
 緑と様々な花達、泉に囲まれてだ。彼等は楽しんでいた。その中でだ。
 パンは陽気に笛を吹く。そうしながらだ。
 ニンフの一人にだ。こう声をかけるのだった。
「今度山の中で一緒に遊ばない?」
「パン様と一緒にですね」
「そう。どうかな」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「私は川のニンフですから」
 だからだとだ。ニンフは誘う様な笑顔でパンに言ってきた。
「川で遊ぶことが好きですけれど」
「僕に川に入られるかだね」
「パン様泳げますか?」
 ニンフは彼のその人間と山羊を合わせた身体を見ながら尋ねた。腰にはかろうじて腰巻があるが基本的には裸だ。それでもいい位毛深いのも山羊のせいである。
「それできますか?」
「勿論だよ」
 笑顔でだ。パンはニンフの問いに答える。
「僕はこのままでも泳げるよ。それにね」
「それに?」
「変身できるから」
 それも可能だからだとだ。笑顔でニンフに話すのだった。
「お魚にでも何でもね」
「あっ、パン様もですか」
「これでも神だからね」
 その力故にだ。彼も変身できるというのだ。
「できるよ。お魚にでも何でもね」
「じゃあ川の中でもですか」
「遊べるよ」
 陽気な屈託のない笑みでだ。パンはニンフに話す。
「川どころか何処でもね」
「わかりました。それじゃあ」
「うん
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