第一部
第五章 〜再上洛〜
五十五 〜覇王の思惑〜
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「よもや、それで仕合え、とは申すまいな?」
「私は構わないけれど、貴方は嫌そうね?……その細身の剣じゃ、確かに無理もないわね」
「当然だ。仕合は借りを返す為だが、愛刀まで犠牲にするつもりはない」
華琳は少し考えてから、
「なら、模擬槍を使いましょう。歳三は剣だし、得物が二人とも違えば公平でしょ?」
「えーっ? ボクに扱えるかなぁ」
「これも修練のうちよ、季衣。歳三もいいわね?」
「私に異存はない」
「決まりね」
槍などまともに心得もないが……やってみるしかあるまい。
竹刀のように何度か素振りをしてから、軽く突き出してみる。
腰だめの位置から相手に向かって繰り出す……その程度はわかる。
とは申せ、刀の突きとは訳が違う。
「華琳さま。これ、軽過ぎませんか?」
「そう? でもそれ、歳三のと同じ重さの筈よ?」
「そうかなぁ。なーんか、調子狂うな」
そう言いながら、許チョはブンブンと模擬槍を振り回す。
模擬槍とは申せ、赤樫で作られたそれは、ずしりと手応えがある。
……あのような得物を使いこなすだけあり、力は相当なもののようだ。
「やあっ!」
と、許チョが槍を振り下ろし、地面を叩いた。
途端、大きな揺れ、派手な音と共に土埃が舞い上がる。
周囲にいた兵が、溜まらず噎せ返った。
「ちょっと、季衣。少しは加減というものを考えなさい」
「あ、ごめんなさい。えっと、難しいなぁ」
見ると、地面に大穴が開いている。
……何処をどのようにすれば、ああなるのだ?
「さて、準備はいいかしら?」
「私の方は、いつでも良い」
「うう〜、まだ慣れないけど……でも、ボクもいいです」
「なら、始めるわよ。両者、位置へ」
華琳の合図で、許チョと向き合う。
勝手がわからぬ故、剣道と同じく、模擬槍を左手に持ち、一礼。
「あ、あれ? あ、えっと、よろしくお願いします!」
慌てて、許チョも頭を下げる。
……ふむ、礼の様式は異なるのだな。
「では、始めっ!」
結果。
あまり刻をかける事もなく、私は勝利を得た。
得物に不慣れな事もあるが、とにかく許チョの戦いは力押し。
本能で得物を繰り出すのだが、基本となる動きは単純なので、程なく見切る事が出来た。
隙を見て、許チョの模擬槍を突き、跳ね飛ばした。
「そこまで!」
「あ〜あ、やっぱり負けちゃった」
……だが、周囲はまるで、耕したかのように地面が掘り返されている。
あの鉄球で向かってこられたなら、私では防ぎようはあるまい。
「それにしても兄ちゃん、強いね!」
許チョは負けたというのに、清々しかった。
「いや。本来の力をいくらも発揮出来ておらぬようだ。それでは仕方あるまい」
「そうだけど、でもやっぱり強いよ。
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