第一部
第五章 〜再上洛〜
五十五 〜覇王の思惑〜
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でも見るとするか」
「と、歳三様!」
「ふっ、今朝の仕返しだ」
流石に鼻血までは噴かぬが、稟の顔は茹で蛸の如しであった。
「おはよう。今朝も早いのね」
翌朝。
払暁間もない頃ではあったが、華琳も既に起きていた。
……寝癖もなく、身支度も万全なのは、完璧主義の為せる業であろうか。
稟は、よく寝ているようであったので、そのままにしておいた。
どのみち、用があるのは私だけだろうからな。
「それで、何を見せるつもりだ?」
「見せるというよりも、貴方自身が動く事になるわ」
「何をさせるつもりだ? 言っておくが、華琳の一助など、私には出来ぬぞ」
「そうじゃないわ。……尤も、やってくれるのなら頼みたいところだけど」
「断る」
「あら、それは残念ね。ま、いずれそうなるでしょうけど」
諦めるような奴ではないが、それにしてもこの執念は見上げたものだ。
私などより、優秀な者は数多いるであろうにな。
「華琳さま、おはようございまーす」
そこに、元気な声と共に少女が飛び込んできた。
「おはよう、季衣」
「あ、土方さんですね。ボク、許チョって言います」
……なるほど。
典韋があの年格好故、想像はしていたが……この娘もまた、鈴々と変わらぬと言ったところか。
まるで、春巻きのような髪型は個性的と申すか……気にしては負けだな。
「それで華琳さま。こんな朝早くから、ボクに何ですか?」
「そうね。歳三、季衣と仕合をしてみる気はない?」
「仕合だと?」
「ええ。貴方自身も相当の腕を持っているようだけど、それをこの目で見る機会が欲しいの」
「それで許チョと申すか。……無体ではないか?」
「そうかしら? それとも、洛陽に着いてから春蘭に相手をさせてもいいわよ」
……どちらにせよ、名にし負う猛将ではないか。
「腕試しならば、私自身である必要はなかろう」
「いいえ、駄目ね。言っているじゃない、貴方は日頃から自分は武人だって」
「それはそうだ。だが、ここで許チョと仕合をせねばならぬ理由は何だ? お前の興味本位ならば断る」
「そう。なら、こうやって軍に同行させた借りをこれで返す、というのはどう?」
「私は、借りのつもりはないが」
「貴方がどう思おうと関係ないわ。この軍を率いているのは私だもの、ただで同行させる程、私はお人好しじゃないわよ?」
そうきたか。
……正直、あまり華琳の前で眼を付けられる真似は避けたいところだが。
事ここに至っては、やむを得ぬな。
「……仕方あるまい。だが、真剣でか?」
「季衣。どうする?」
「どうって……ボク、この武器以外扱えませんよ?」
そう言って、許チョが示したのは……鎖に、巨大な鉄球をつけたもの。
兼定であれをまともに受ければ、結果は自ずと知れよう。
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