第一部
第五章 〜再上洛〜
五十五 〜覇王の思惑〜
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翌朝。
「お目覚めですか?」
「……うむ。もう、起きていたか」
「はい。……寝顔を、拝見していました」
稟は、そう言って微笑む。
「今更、物珍しくもあるまい?」
「いえ、いつまでも見ていたい程です。見飽きるなど、あり得ませんよ」
「そうか。だが、いつまでもこうしている訳にはいくまい?」
「……ええ。女としては残念ですが、軍師として主を怠惰にさせる訳にはいきませんからね」
ふっ、言うようになったものだな。
「さ、起きましょう。朝食の仕度をしますから、お顔を洗ってきては如何ですか?」
「わかった、そうしよう」
手早く朝食を済ませ、宿を出る。
陳留に立ち寄る事になったのは、あくまでも想定外の事。
疾風を先行させたとは申せ、あくまでも洛陽入りは私自身が軍を率いている必要がある。
「稟。急いで参るとするか」
「御意」
外に出ると、何やら騒がしい。
「あの、何かあったんですか?」
稟が、通行人に尋ねた。
「何だ、知らないのかい、姉ちゃん。領主様がまた、洛陽へ出立するってお触が出たんだ」
華琳が?
確かに、書物を取りに戻っただけとは申していたが、それにしても急な事だ。
……待てよ。
わざわざ触れて廻る、という事は……。
「稟。もしや、城門が閉鎖されているのではないか?」
「可能性はありますね。行ってみましょう」
「うむ」
よもや、私を此処に留め置くために打った手、という訳ではあるまいが。
手段を選ばぬと公言している奴だ、楽観は出来ぬな。
城門へと急ぐと、確かにそこには軍馬が犇めいていた。
その中心に、見慣れた金髪の少女がいる。
「あら、来たわね」
「随分と急な出立だな?」
「ええ。私は一時的に戻ってきただけだから、すぐに戻らないといけないの」
しれっとした顔で、華琳が言った。
「それで、この騒ぎか?」
「仕方ないじゃない。いくら治安維持に気を配ってはいても、こんなご時世だもの」
「確かに、理には適っているな。で、暫くは何人たりとも通せぬ、そうだな?」
「ええ、良くわかっているじゃない」
「で、どうしろと申すのだ? よもや、我らだけ例外ではあるまい?」
「ふふ、察しがいいわね。さて、どうしようかしら」
主導権を握ったせいか、華琳は上機嫌だ。
……だが、私とてやすやすと相手の策に陥る程、甘くはない。
「ならば、お前に選ばせてやろう」
「……何ですって?」
ピクリ、と華琳の眉が動く。
「…………」
稟は、口を挟もうとはせぬつもりらしい。
私を信頼しての事でもあるだろうが、寧ろ、私がどう切り抜けるつもりなのか、興味があるようだ。
「まず一つ目。黙って我らを通す事」
「論外ね。例外なし、と言うのは貴方もわかっているんだし」
「ならば二つ
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