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すり
5部分:第五章
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ろ?それを考えたらあいつはまだ幸せだよ」
 おみよはだ。そうだったというのだ。
「あれ位で済んだんだからな」
「そうでやんすね。けれどそれは」
「あいつだけじゃないさ」
 おみよに限ったことではないというのだ。こうした話は。
「俺達だってそうなんだよ」
「そうでやんすね。悪いことをすれば」
「絶対に報いが返って来るんだよ」
「誰かが見てて」
「罰を与えるものなんだよ。そのことはよく覚えておいてな」
 それでだと言ってだ。三次は。
 蕎麦のつゆに唐辛子をかけようとした。しかしだ。
 その蓋を開けたところでどばっとだ。つゆに唐辛子が入った。それを見てだ。
 久吉は笑ってだ。こう三次に言ったのだった。
「これもでやんすか?」
「そういえばさっきちょっと女房に下らねえことで文句言ったな」
「その報いでやんすか」
「そうだろうな。やっぱり報いってな」
「あるでやんすね」
 三次は苦笑いで、久吉は明るい笑いで話した。三次はそのうえでその唐辛子まみれになったつゆで蕎麦を食べた。その蕎麦の辛さは女房に文句を言った分の報いの味がした。


すり   完


                       2012・2・28

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