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戦国異伝
第二百二話 関東入りその十

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「あの城を築かれるとな」
「あそこに篭もり、ですな」
「何年も城を囲む」
「そうしてきますな」
「何ヶ月かではなく」
「その意気を見せておる、そしてじゃ」
 そのうえで、というのだ。
「織田の兵達は今小田原以外の城に向かっておる」
「そして、ですか」
「その城を一つずつ攻め落としていく」
「そうしていきますか」
「ここで」
「これは危うい」
 北条家にとっては、というのだ。
「支城の者に伝えよ」
「はい、何と」
「何と伝えられますか」
「命を無駄にするな」
 これが氏康が支城の兵達に告げたのだった。
「決してな」
「それは、ですな」
「決して、ですな」
「命を粗末にせず」
「そのうえで」
「そうじゃ、攻め落とされるのなら織田に降れ」
 かなり具体的な言葉だった、氏康の言葉は。
「そして生きよとな」
「織田に降ってもですか」
「そうしてでもですか」
「生きよと」
「そう仰って頂きますか」
「命を粗末にするなじゃ」
 そこは決して、というのだ。
「わかったな」
「ではその様に」
「海から舟を出しそのうえで伝えます」
「他の城に」
「そうさせて頂きます」
「それではな」
 氏康も応えてだ、こうしてだった。
 支城にそうしたことも伝えられることになった、それと共にだった。
 氏康は城にいる家臣達にだ、意を決した顔で言った。
「あの城が築かれる前にな」
「はい、その前にですな」
「城をですな」
「潰す」
 一言での言葉だった。
「よいな」
「はい、そうしてですな」
「敵が我等を長きに渡って囲むことを阻みますな」
「とりあえずは」
「そうしますな」
「そうじゃ、まずはじゃ」
 とにかく、というのだ。
「あの城を築かせぬ」
「では何時攻めますか」
「その時は」
「夜じゃ」
 その時にというのだ。
「攻めてじゃ」
「あの城を崩し」
「敵を阻みますか」
「籠城しても籠るばかりではない」
 氏康は鋭い目で言った。
「時にはうって出てじゃ」
「敵を倒し、ですな」
「阻むのですな」
「そういうことじゃ、おそらく城はもう少しすれば完成する」
 その築城の速さも観てだ、氏康は言った。
「しかしその前にじゃ」
「夜襲を仕掛け」
「そうして」
「焼く、よいな」
 こう言ってだ、氏康は信長が築かせている城への夜襲を決意した。だがそれは信長も読んでいたのだった。
 信長は傍にいる幸村と兼続にだ、こう言った。
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