第四十二話 近付く真実その二
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「学問は一生だよ」
「一生ものかよ」
「そう、勉強は下地でね」
「学問はそこからのものか」
「一生、それも楽しんでするものだよ」
「楽しんでか」
「うん、僕はそう考えているよ」
それが勉強と学問の違いだというのだ。
「近いことは確かだけれどね」
「また違うんだな」
「そうだよ」
「成程な」
「まあとにかく勉強はしているから」
入学が内定している状況でもというのだ。
「そしてお医者さんになってね」
「それからもあるんだな」
「うん、多くの人を助けられる人になりたいね」
「お医者さんっていうと」
ここで言ったのは菊だった、菊が言うこととは。
「何か色々あるみたいだけれど」
「医療ドラマにあるみたいな権威社会かな」
「はい、ああいうのありますか?」
「そうみたいだね」
そうした状況の存在をだ、智和は否定しなかった。
「どうやら」
「やっぱりそうですか」
「ブラックジャックや白い巨塔にも描かれているけれどね」
「何であんなに偉そうなんですか?」
「勘違いをしているんだよ」
「勘違いですか」
「うん、ああした人達はね」
そうした作品に出て来る大名行列の様に人を引き連れふんぞり返って診察をする医者達はというのだ。まるで両班の様な彼等は。
「勘違いをしているんだよ」
「どういった勘違いですか?」
「自分が医学の知識を持っている、人を助けられる技術を持っている。そして教授や院長っていう高い立場とされている場所にいるから偉いって思っているんだよ」
それがまさに勘違いだというのだ。
「そう思っているからね」
「だからですか」
「そう、勘違いをしているんだ」
「けれどなんですね」
「そう、実際はね」
智和が思う現実、それはというと。
「偉くとも何ともないよ」
「人を助けられてもね」
「だって。自分も助けられるじゃない」
その医者達もというのだ。
「人にね」
「そうですね、お医者さんだって人間ですから」
「うん、だからね」
「絶対に助けてもらいますよね」
「人は神様じゃないから」
生きていて怪我をする、そして死ぬ。そうした存在だというのだ。
「そうなるからね」
「だからですね」
「うん、同じだからね」
「偉くないんですね」
「人は皆同じだよ」
智和は微笑んでこの真理にも言及した。
「所詮小さなね、誰もが大して変わらない存在なんだ」
「そういうものですね」
「素晴らしい人、見下げ果てている人はいるけれど」
その双方があるのも人間だ、黄金の精神を持つ者もいれば吐き気を催す忌まわしい者も共に存在しているのだ。
「それでもね」
「同じなんですね」
「そう思うよ、僕は」
「では私達も」
「人間だよ」
智和は桜の問いにも即答で返した。
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