五十話:ただ一人君の為なら
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クロノスの言葉を遮り、ガイアスが何千年かかってでも辿り着いてみせると豪語する。そして、その台詞にミュゼも精霊として人間を信じることをクロノスに伝える。クロノスはその言葉に少し笑い人間の可能性を見届ける心積もりになる。
『世話を掛けるね、クロノス』
『時間はある。小言は、あとでゆっくり言わせてもらう』
礼を言うオリジンに対してクロノスはそんなことを話すが、その顔はどこか楽しげなものであった。そしてオリジンはルドガーの願いを叶える準備を見せる。
『それじゃ、ルドガーの願いを叶えよう。すべての分史世界の消去を――!』
オリジンの体から光が放ち始め、その光はやがて束になり天へと昇っていく。そして光がはじけ飛び、辺りが神々しいまでの光に包まれる。そんな様子をルドガー達と黒歌達は黙って見届ける。全ての分史世界とそこに住む全ての命が消えた。
その事はこれからも彼等にとっての十字架になるだろう。だが、彼等は振り返らずに進み続ける。ルドガーもまた止まることなく自らの生の終わりへと歩いていく。そして、ジュード達は残り少ない時間でルドガーと最後の言葉を交わす。
『ルドガー、君と出会えて良かった』
『お前が成したことは、この胸に刻んだ』
『ちょっと、綺麗すぎだけどな』
『それが出来るのが、ルドガーとあなたの違い』
ジュード、ガイアス、アルヴィン、そしてミュゼの言葉にルドガーは黙ってうなずいていく。ルドガー自身は自分の行いがそんなに綺麗な物だとは思っていない。己の欲望の為にエゴを貫き通した。ただ、それだけだと思っている。つまり、言い換えれば己の夢の為に意志を貫き通したということなのだが、彼はそれを誇ろうとはしない。
『エルさんのことは、心配しないでください』
『私達がついているから!』
『約束、します!』
ローエン、レイア、エリーゼ、ティポの言葉にもルドガーは黙ってうなずいていくだけだった。彼等の間には言葉はいらない。それだけルドガーは仲間達の事を信頼していた。彼等なら自分の代わりに必ず、エルを守ってくれると確信していた。
『君のおかげで再び使命を果たすことが出来た。感謝するよ、ルドガー・ウィル・クルスニク』
『……なあ、ミラ』
そこで初めてルドガーは口を開く。顔が隠れているために表情は分からないがその声はどこか愛しい人へ話しかけるような柔らかさがあった。
『“ミラ”は……俺のこと見てくれてるかな?』
『……見ているさ、ずっとな』
『そうか……』
笑顔で言われたミラの言葉に満足気な声を出し、愛しい人へと想いをはせるルドガーだった。そんな様子に黒歌は複雑な気持ちになるが嫉妬は無い。むしろ、彼女の分まで彼を支
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