五十話:ただ一人君の為なら
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こぼして俯くレイアにアルヴィンがそんな言葉をかける。その言葉にレイアは顔を上げてただ一人の少女を守り抜いた男の最後の瞬間を、目を逸らさずに見つめる。黒歌達も、ルドガーの選択を最後の瞬間まで見届けるために目に涙を溜めたり、歯を食いしばったりしながらに真っ直ぐに見つめる。
『マクスウェル、これが人間なんだね』
『……ああ。きっと人は、どんなこともなせる』
『信じられぬほど愚かなこともな』
オリジンの言葉にミラが誇らしげにそう答える。だが、クロノスがすぐさま皮肉気にやはり人は愚かだとばかりに言葉を続ける。しかし、オリジンはそんな人間の魂の“負”こそが人間の力そのものだと答える。その言葉にローエンが驚きの声を上げる。
『そもそも“負”ってなんだい?』
『それは……欲望とか?』
『エゴとかだろ』
オリジンの問いかけにレイアが欲望と答え、アルヴィンがエゴと続ける。だが、そこにガイアスが口を挟んで否定をする。
『いや、欲望は言い換えれば夢。意志も見方を変えればエゴとなる。単純に善悪に分けられるものではあるまい』
『その通り。だから僕は“負”を浄化なんてしてないんだよ』
その言葉に驚きの表情を浮かべるルドガー達。そんなルドガー達にオリジンは、自分は魂の循環の時に瘴気を取り除いて、封じていただけだと答える。それに対してミラがそれでは瘴気が際限なく瘴気が生まれるのではないのかと問いかける。
『だから試したのさ。“負”をもったまま魂を昇華できるかどうか―――人の“選択”をね』
オリジンの審判、それはオリジンが人の選択を試すために行ったもの。“負”をもったまま魂を昇華できるかどうかの選択をルドガーはその命を持って示してみせた。彼の魂は間違いなく昇華したのであろう。
『……でも、示し続けなきゃ意味がない』
だが、オリジンの言う通りルドガー一人が示しても意味がない。人間として示し続けなければならない。その途方もなく長い道のりを想像してアーシアが心配そうな顔をするがジュード達の顔は決意に満ち溢れていた。
『はい。僕達も、証明してみせます。ルドガーやエル、ユリウスさんのように――』
『……我の妨害より厳しい試練だ。それを越えられては是非もない』
ジュードの言葉にクロノスがどこかルドガーを認めたような言葉を告げる。そして、オリジンの隣に行き、共に瘴気を封じ込めると答える。そんなクロノスにミラが声をかけるがクロノスは頷くだけで言葉を返さない。
『だが、再び人間が―――』
『心配はいらん。何千年かかろうと、辿り着いてみせる』
『私も信じたくなっちゃった。誰かさんたちのせいで』
『……面白い。やってみせろ』
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