3.強制転移
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「やっとまともに戦えるようになったかな・・・・・・」
最初に敵を倒してから一時間ほど、続けて戦闘を繰り返した。相手との距離感、動き、次の攻撃の予測と回避、通常攻撃とソードスキルの発動のタイミングと発動の仕方を覚えた。正直まだ少し不安だけど、一層のしかも《はじまりの街》周辺ならそこまで強い敵は出ない・・・・・・はずだ。慣れない剣の戦闘に最初は少し苦戦したが、なんとか使えるようになったと思う。一度は超近接攻撃武器のナックルやクロー系の武器にしようかとも考えたが――現実では基本殴ったりのグローブが武器だったので――この世界では普通の剣のほうがいいだろう。何より普段使わないものの方が面白い。これはゲームなのだから。
この戦闘でだいぶいらないものやコル――この世界の通貨――が溜まっている。俺は一度街へ戻るために、マップを確認しようと、空中で右手の指を揃えて下へ振る。澄んだ鈴の音に似たような音とともに出現するウィンドウ。ふと時間を確認すると、もうすぐ五時半を回ろうとしていた。俺はもう少しこの世界に居られそうだと思い、息抜きに少しだけ周りを見渡した。
まさに幻想的な風景だ。現実かと見紛うほどだ。四方にひたすら広がる草原は、ほのかに赤みを帯び始めた陽光の下で美しく輝いている。流れる滝や川の水が光を反射し、木々は深い緑に彩られている。遥か北には森のシルエット、南には湖面のきらめき、東には街の城壁を薄く望むことができる。そして西には、無限に続く空と金色に染まる雲の群れ。
巨大浮遊城《アインクラッド》第一層の南端に存在するスタート地点、《はじまりの街》の西側に広がるフィールドに、俺はいる。周囲では少なからぬ数のプレイヤーが同じようにモンスターと戦っているはずだが、空間の恐るべき広さゆえか視界内に他人の姿はほとんどない。遠く離れたところで時たま青い光が見えるくらいだ。
アインクラッドの四季は、現実に準基している。ゆえに今は向こうと同じく初冬ということになるなる。
時刻は五時半を回り、細く覗く空は真っ赤な夕焼けに染まっていた。差し込む夕日が、広大な草原を黄金色に輝かせ、俺は異常な状況にもかかわらず、仮想世界の美しさに言葉を失った。
そうしてしばらく感動に浸っていると、突然、リンゴーン、リンゴーンという、鐘の音のような――あるいは警報音のような大ボリュームのサウンドが鳴り響き、途端に、俺の体を青い光が包み込んだ。
直後。
世界はその有りようを、永久に変えた。
「えっ!?な・・・・・・何がどうして・・・・・・!ここは、はじまりの街?」
広大な石畳。
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