第一部
第五章 〜再上洛〜
五十四 〜陳留にて〜
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とギョウでは、街の役割が異なりますし」
「郭嘉殿、それはどういう意味でしょうか?」
稟の発言に、夏侯淵は興味を覚えたらしい。
「此処陳留は洛陽からも程近い立地。洛陽が住みにくいと感じた人々が移住したり、洛陽の代わりに諸国からの物資が集まっていると見ました」
「ほう。何故そう思われる?」
「言葉と、身に纏っている衣装ですよ。実に多種多様ではありませんか」
言葉の差異までは流石にわからぬが、なるほど衣装は実に様々だ。
店や市に並べられている品物も、見た事のない物が相当数混じっているようだ。
「一目見ただけでそれがわかるとは……流石、土方殿の知恵袋だ」
「いえ、これは旅の賜物ですよ。一方、ギョウは河北の拠点になっています。人も河北から集う為、比較的同じ地域の人々が多いですね。言葉にもあまり違いは見られませんし」
「なるほど。だから甲乙つけ難い訳か……」
夏候淵は、しきりに頷いている。
だが、これも華琳が一代で築き上げた繁栄と聞く。
私の許には、愛里、元皓らの優秀な文官がいるが、華琳はそれをほぼ独力で為し遂げた。
それだけで、華琳が如何に抜きん出た才を持つか、自ずと知れよう。
「さて、土方殿。次は何処をご覧になりますか?」
「今少し、この通りを見てみたいのだが」
「わかりました」
途中、洒落た茶店にて、一息ついた。
「ふむ、なかなか良い茶を出すな」
「ええ。茶菓子も良く吟味されていますし。流石は、夏候淵殿推挙の店だけの事はありますね」
「この店は、華琳様も認める程の亭主がやっているのです、質が良くて当然です」
そう語る夏候淵は、何処か誇らしげだ。
「内政に長け、戦の駆け引きにも優れ、謀も得意。おまけに舌も肥えているとは……まさに、完全無欠ではないか」
「確かに、華琳様は何事にも秀でた御方です。ですが、そこに至るまでには不断の努力をされておいででもあります」
「ただ、生まれ持った才能があるのは確かでしょうね。何人かの諸侯にも会いましたが、曹操殿のような方は私は存じ上げません」
夏候淵はフッと笑った。
「ですが、そんな華琳様が認める数少ない人物の一人が貴殿です。運だけではなく、実績でその才を示されましたからね」
「そうでもあるまい。私が今日あるのは、皆の支えがあってこそ。私は武人、華琳のように政治には向かぬ」
「ふふ、相変わらずのようですな。地位や権力を手にした途端、馬脚を現す輩が多い中、貴殿は以前のまま。それ故、華琳様も高く評価されておられるのでしょうが」
「褒めても何も出ぬぞ? 私はこれでも、自分を弁えているつもりだからな」
「ところで曹操殿は、料理の腕も確か……と聞きましたが、本当なのですか?」
稟が話題を変えようとしたのか、夏候淵に訊ねた。
「その通り。並の料理人では太刀
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