第一部
第五章 〜再上洛〜
五十四 〜陳留にて〜
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ではないな」
「そ、そうではなくですね」
む、耳まで真っ赤になっているようだが。
「そ、その……。夫婦とぶはっ!」
盛大に鼻血を噴き上げる稟を、何とか抱きかかえた。
華琳も流石に驚いたらしく、いつになく狼狽しているようだ。
「ちょ、ちょっと! 郭嘉、大丈夫なの?」
「う、うむ。止血すれば大事なかろう」
……最近、すっかり影を潜めていたから失念していたが。
話の流れとは言え、ちと不用意だったか。
半日後。
「あれが陳留よ」
行く手にそびえる城壁。
ひび割れ一つなく、見事に手が入れられている。
「流石に、堅固そうですね」
「うむ。それに、兵の動きに無駄がないな」
「当然でしょ。誰の本拠だと思っているのかしら?」
不遜でもあるが、華琳の場合はそれが確かな自信に裏打ちされている。
……袁紹とは、やはり決定的な差があるとしか言えぬな。
城から、一隊が此方に向かって出てきた。
「華琳様。お戻りなさいませ」
「ええ、ただいま秋蘭」
「……ふふ、やはり土方殿でしたか」
夏侯淵が、我らを見て軽く頷いた。
「だから言ったでしょ? 私が出向いて正解だったわ」
「はい。兵だけでは、土方殿程の御方を相手にするには荷が重過ぎるかと」
「お陰で、こうして無事に確保出来たものね。ねぇ歳三、何ならずっとこの城に」
「断る。そもそも、今の私は昔とは違い、兵も抱え官位もある身だぞ?」
華琳の言葉を、敢えて遮った。
「ふふ、だから何? 言った筈よ、私は欲しい物はどんな手を使っても手に入れる主義だって」
「…………」
そんな華琳を、私は黙って見据える。
「曹操殿。冗談とは思いますが、そのような事で我が主が、貴殿に跪くとでも?」
「……言うわね、郭嘉。なら、貴女はどうかしら?」
「折角のお言葉ですが。私の仕えるべき御方は歳三様以外にあり得ませんから」
「でしょうね。駄目元で言ったまで、気にしないで」
その割に、眼が笑っておらぬのだがな。
「さて、秋蘭。歳三達に陳留の城下を案内してあげて欲しいんだけど」
「は。しかし、宜しいのですか?」
「別に隠すような事もないでしょう? じゃあ、頼んだわよ?」
「わかりました、華琳様」
華琳は頷くと、城の奥へと去って行った。
「済まぬな、夏侯淵。お前も忙しい身であろうが」
「いえ、構いません。華琳様の命ですから」
何気ない言葉にも、華琳への全幅の信頼が窺える。
この主従の絆も、相当なものだな。
「ここが目抜き通りです」
まず、案内されたのは陳留一の繁華街。
「活気がありますね」
「うむ。店の数も相当なものだな」
「ギョウと比べて、如何ですか?」
「そうだな。稟、どうか?」
「はい。甲乙つけ難し、ではないかと。それに、陳留
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