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マスターは極度のマヨラー
マスターは極度のマヨラー
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 お気に入りの本を持って公園に行こうと思ったらお天気雨に降られ、仕方なく最近新しくできたというカフェが近くにあったので入ってみる事にした。
「いらっしゃいませ」
 こぢんまりとした店内は穏やかな曲調のジャズが流れていて雰囲気が良く、カウンターに立ったマスターが無愛想に迎えた。
 折角雰囲気は良いのにそんなに無愛想で接客大丈夫なのかと思ってしまうほど、そのマスターは仏頂面だった。艶のある短い黒髪に瞳孔開き気味の鋭い目付き、顔立ちは整っているのだが最早仏頂面を通り越して悪人面かもしれない。
 カウンターの席に着くとメニューとお冷やが差し出された。メニューを開くと小さな店にしては品数が多く、酒類も置いているようだった。
「酒もあるんですねィ」
 何となく話し掛けてみる。
「夜はバーをやってるんですよ。昼も飲みたがるお客さんがいるので少量置いています」
「へぇ」
 会話は特に続く訳でもなかったが悪い気はしない。少し悩んで度数の低い酒とオムライスを注文した。オムライスは単純に沖田が好きだからだ。
 オムライスが出来上がるまでの間持ってきていた本を読む。
「本がお好きなんですか?」
「まあ嫌いじゃねェですよ。俺が読むのは大概ライトノベルですけど」
 難しい本は分からないと告げるとそうなんですかと無難な返事が返ってくる。
 どうやら口数はあまり多くはないようだ。それでも話し掛けてくる辺り接客しようという気持ちの表れだろうか。
 やがて沖田が本に集中し始めると話し掛けてこなくなる。その心遣いが非常に心地良い。これでオムライスが美味かったら覚えておいてまた来ようと思った。
 やがて注文した酒と共にホクホクと湯気が立つオムライスが目の前に置かれて読んでいた本を閉じた。いかにも美味しそうな匂いが鼻を擽る。

「マヨネーズはいりますか?」

「……は?」
 突然の斜め上な問いかけに間抜けな声が出た。
「何でマヨネーズ? 普通ケチャップじゃねェの」
 思わずタメ口になってしまう。
「オムライスにマヨネーズ、意外と美味しいんですよ」
「……絶対ケチャップでさァ」
 ケチャップをごり押しするとマスターは残念そうにケチャップを差し出す。
 そんな様子がおかしくて笑ったら、小声で「……こんなに美味ェのに」と呟くのが聞こえてますますおかしくなる。
「アンタ、マヨラーなんですかィ?」
「当たり前だ、マヨネーズは万能なんだぞ……っと、すみません!」
 熱くなり過ぎて素の口調が出てしまったらしく慌てて謝ってくる。
「別にいいですぜ、敬語使わなくても」
「ですが……」
「アンタ、大分無理してるだろィ。アンタの事気に入ったんで構いやせんよ。つーか俺の前では敬語禁止」
「何で禁止?!」
                                    

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