6部分:第六章
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第六章
「まだな」
「ああ、そうだな」
「当たりどころが悪かったら死んでたな」
「そうなってたぞ」
ペリシテの仲間達がその彼に言う。
「とにかく。今回は俺達の負けだ」
「仕方ない、引き下がるぞ」
「約束は約束だしな」
「ああ、退くか」
ようやく立ち上がりだ。ゴリアテは言った。
こうしてだ。彼等は渋々ながら撤退するのだった。約束は守った。
かくしてヘブライは勝った。兵士達はだ。
ダビデを取り囲みだ。口々に言うのだった。
「まさかな。あのゴリアテに勝つなんてな」
「凄いじゃないか」
「石一つでな」
「それで勝つなんてな」
「信じられないな」
「けれど本当に勝ったんだ」
その事実もまた話される。
「ペリシテに勝ったんだ」
「そうだな」
「あのゴリアテも退けたんだ」
「全部あいつのお陰だな」
「ああ、ダビデのな」
「あいつがやってくれたんだ」
こう言ってだ。ダビデを見るのだった。その彼はだ。
ヘブライの者達が囲みだ。そうして声をかけるのだった。
「全部御前のお陰だよ」
「本当によくやってくれたよ」
「凄いことやったな」
「あんなのを石一つでやっつけるなんてな」
「信じていたからね」
ダビデはだ。自分より背の高い彼等を見上げてだ。そのうえで笑顔で応えたのだ。彼はまだ少年だ。背は兵士達には及ばなかった。
それでもだ。その彼等に負けない大きなものを見せてだ。話すのだった。
「僕はね」
「信じていた?」
「というと?」
「何を信じていたんだ?」
「決まってるじゃないか。神様をだよ」
神をだというのだ。そのヘブライの神をだ。
「信じていたからね」
「神をだったのか」
「ヤハウェの神を」
「それで勝ったっていうのか」
「そうだよ。神様を信じて勝てるって思ったから」
それでだと言うダビデだった。
「僕はあいつと戦ったんだ」
「スリングと石だけでか」
「それだけで」
「それで僕は勝ったよ。神様のお陰でね」
「そうだな」
兄がだ。弟のその言葉を受けてだった。
微笑んでだ。こう彼に言うのだった。
「御前のその勇気はな」
「勇気なんだね」
「自分よりもずっと大きくて強い奴に向かった勇気」
その勇気だというのだ。
「それをもたらしてくれたのは。神だからな」
「そうだね。だから僕は勝ったんだ」
「勇気をもたらしてくれた神様を信じていたからね」
「そうだな」
兄は弟の言葉を笑顔で受けた。他の兵達もだ。
ダビデは自分の神を信じてその神がもたらしてくれた勇気でゴリアテに勝った。そしてペリシテの者達を退けた。そして彼はその信仰と勇気を信じてだ。ヘブライの王となった。ヘブライの偉大な王ダビデの少年の頃の話である。
小さな信頼
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