6部分:第六章
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第六章
「果たしてできればだ」
「では行くぞ」
徳兵衛がこう言うとであった。
彼の足元に煙が起こりだ。そしてだった。
そこからだ。緑の蝦蟇が出て来た。その蝦蟇に乗ったうえで児雷也に言う。
「わしの蝦蟇と御主の蝦蟇、どちらが上か」
「勝負じゃな」
こうしてだ。両者の戦いがはじまった。
互いの蝦蟇が舌を出しそれをぶつけ合いだ。空を飛ぶ。
そして空の上で激しくぶつかり合うのだった。何度も何度も。
徳兵衛と児雷也自身もだ。ただ蝦蟇の上にいるのではなく。
その手から手裏剣や煙玉と次々と出してだ。互いに攻撃し合う。
「ほう、これは」
「やるものだな」
互いに攻撃し合いながらだ。二人は言うのだった。
「蝦蟇を使うだけではないか」
「こうしたものもできるか」
「これは中々」
「思ったより楽しめそうだな」
楽しげな笑みになってだ。言う二人だった。
さらに闘いは続く。蝦蟇達はやがて。
火まで吹き合い江戸の屋敷の上に降りそこで睨み合いまた舌をぶつけ合いだ。再び空にあがってまた激突してだ。そうしたことを繰り返しだ。
一刻も二刻も闘う。それを見てだ。
江戸の者達はだ。唖然としていた。そして言うのだった。
「おいおい、これはまた」
「派手な争いだな」
「喧嘩なんてものじゃないな」
火事と喧嘩はこの頃から江戸の華だった。
「戦だよ、これは」
「関ヶ原だな」
「いやいや、壇ノ浦だよ」
「それか応仁の乱だよ」
こう話してだ。彼等もその闘いを見守る。
将軍綱吉もだ。この闘いをだ。江戸城の櫓に入って見るのだった。
そこから見ながらだ。こう口惜しそうに言うのであった。
「今回ばかりはじゃ」
「今回ばかりは」
「といいますと」
「天守がなくなったのを残念に思う」
その口惜しそうな顔での言葉だった。
「あれが今もあればよりよく見られたのだがな」
「確かに。櫓では限りがあります」
「ですから」
「そうじゃ。見られたのだがな」
そのことを残念に思っての言葉だった。
「言っても仕方ないがな」
「ですな。それは」
「御言葉ですが」
「それとここで蝦蟇が死ぬのもよくはないが」
生類憐みの令の話だ。実は江戸とその近辺でしか行われていない。
「しかしそれ以上にじゃ」
「はい、江戸のこれからがかかっております」
「今の戦に」
「徳兵衛よ、頼むぞ」
綱吉の言葉が切実なものになる。
「とはいっても児雷也もじゃ」
「あの者もですか」
「そうじゃ。こうして見ておるとどうにも憎めなくなった」
彼の闘いを見ての言葉だ。
「江戸の為には是非負けてもらわねばならんがな」
「それでもですか」
「今は」
「そうじゃ。見るしかない」
それしかないとだ。綱吉は
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