第七話 『狂喜』
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「なあ。人が死ぬときって、どんな気分なんだ?」
その男は、おぞましい姿をした感染者たちを前に、そう問いかけた。
「死んでも体が動くって……どんな気分なんだ?」
不適な笑みを浮かべながら、その男は左手にもつ大振りのナイフを構え直し、小さな喜びの声をあげながら歩く死体の波へと飛び込んでいった。
「……さ、寒い」
ぶえっくしょん!と盛大なくしゃみを上げているくせに、したあとはその音を気にしてキョロキョロと辺りを見回している千歳を前に、俺は苦笑いを浮かべながらベンチに座った。学校を無事に脱出した俺たちは、一度、生存者がまだ多かった都市部を離れて、月見山の麓にある、月見ヶ丘公園へと避難した。ここは脱出できる道が5本あるので、いざというときはそのどれかから逃げられるし、日差しや雨を防げる屋根もある、と言う陵太の提案があったためだ。
「今しがた大きなくしゃみが聞こえたけど、いったい誰かな?」
と、薪集めから帰ってきた陵太が暗黒微笑を浮かべながら千歳の方へ歩み寄っていった。
「え、あ…えっと…」
バキッ!
『南無三』と密かに合掌しながら千歳の無事を祈った。
「それより陵太、これからどうするよ。いつまでもここにいる訳にはいかないだろ?今は大丈夫でも、そのうち奴等も感づいて来るはずだ」
「ああ、わかってる。もっと安全なシェルターを確保しないと、次の行動も起こすに起こせないしな」
いつもだったら下らないような話を楽しそうにしているのに、こんな話はあまりしたくないな……。などと考え気を紛らわせようと立ち上がった時だった。
「皐月くん!雲母くん!」
佐伯が慌てたようにこちらへ走ってきた。
「どうした佐伯。なにかあったのか?」
「火を起こせるものがないかって、望月さんと管理室がある建物に入ったら、変な男が!」
陵太と俺は顔を見合せ、とにかく行こうと三人で走り出した。
「優衣架!大丈夫か!?」
そう言いながら部屋の扉をくぐると、そこには大振りなナイフをもった男が優衣架に斬りかかっているところだった。優衣架はそれをギリギリでかわし、左足で反撃の蹴りを放つが、相手もそれなりに格闘術の心得があるのか、右手の肘でそれを受け止め優衣架の薄い腹部へと蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ……」
2メートルほど飛ばされコピー機や机の類いに突っ込んだ優衣架は、ぐったりとしたまま起き上がらない。その様子を見ながら、男は左手のナイフを持ち直すと優衣架へと降り下ろそうとする。
「やめろ!!」
そう言い放ったと同時に、俺は男へ向けて走り出した。そのままスライディングして左足を膝裏、右足は腹へ叩き込み、無理矢理に男をなぎ倒す。
「ぐあっ!」
思っていたよりも高め
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