第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十二 〜洛陽へ〜
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りませんし、何かの意図があるのは確かですね。ただ、悪意は感じませんでしたが」
「……恐らくだが。典韋は華琳……曹操から送り込まれた、間諜だな」
「え? ど、どうしてそう思われるんですか?」
「典韋と言えば、華琳の麾下である筈だ。この時期に、冀州にいる時点で不自然だ」
だが、朱里は釈然としないらしい。
「ですけど、それが何故、曹操さんの麾下だと?」
「根拠か。……愛里、追々説明してやるが良い」
「わかりました。では歳三さん、念のため、密かに見張りをつけておきます」
「うむ」
正直、間諜としては些か素直過ぎるきらいがあるが……逆にそれだからこそ、疑われにくいと思ったのやも知れぬな。
華琳が何を企んでいるか、お手並み拝見といくか。
翌朝。
我が軍と袁紹軍は、城門の外で集結。
袁紹は……顔色が幾分良くなっているようだな。
「行かれますか、土方様」
張世平、それに蘇双も見送りに出てきた。
「うむ。そなたらは、如何する?」
「手前共は商人。この街が盛んな限りは、此処を離れる理由はございません」
「それに、魏郡太守は依然として土方様のままです。大陸広しと言えども、この地より安心出来るところなど、そうそうございますまい」
「そうか。ならば、私が戻る日まで、励むが良い」
「はい。金子の事、何時なりともお命じ下さいませ」
「洛陽にも、手前共の出店がございます。何なりと、お申し付け下さい」
「わかった。その時は、頼りにさせて貰う」
「畏まりました。では、くれぐれもお気を付けて」
ふと、二人の後ろに、庶人が大挙して近寄っているのに気付いた。
「どうかしたか?」
「……あの。太守様、お戻りは?」
先頭の中年男が、恐々と尋ねてきた。
「わからぬ。半年か、数年か……」
「戻ってきて下さいますよね?」
「もう、ここは太守様以外の人に治めて欲しくないんです」
「お願いです。きっと、きっと、お戻りを」
皆が、口々に叫ぶ。
私は手を挙げ、それを制した。
「こればかりは、私の一存では決められぬ事だ。だが、どんな形であろうと、再びこの地を踏む事は、皆に約定しよう。それまでの間、暫しの別れだ」
「太守様!」
「土方様!」
任について短い間にも関わらず、皆がこうして慕ってくれるとは。
……まさに、感無量だ。
補佐役か、軍司令官が関の山、と思っていた私が……ふふ、運命とはわからぬものだ。
「元皓(田豊)。覚悟は定まったか?」
「……はい。太守様が築き上げた、庶人の皆さんからの信頼。損なわないよう、頑張ります」
うむ、いい顔をしている。
後顧の憂いがない、という事がどれほど心強い事。
それを、再認識させられた。
「みんな、元気でいるのだ!」
「また会おうぞ!」
鈴々が、愛紗が
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