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焼け跡の天使
4部分:第四章
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だ?」
「ボランティアです」
 若者はまたイワノフに答えた。
「ボランティア・・・・・・」
「簡単な話でお助けに参りました」
 また述べた。
「些細なことですけれど」
「じゃあこのオートミールはそれか」
 彼はここまで聞いて話を理解した。
「そのボランティアで」
「この国のお話は聞きました」
 若者は戸惑いながら、だがそれでもしっかりとした声で彼に言うのだった。
「僕達、何もわかっていないかも知れません。けれど」
「助けに来たっていうのか?」
「そうです」
 またイワノフに言うのだった。何か戸惑いがちなのは何故だろうと思いながらもイワノフは彼の話を黙って聞いていた。
「いけませんか、それは」
「別にそうは言わないが」
 思いもしない。ただオートミールが嬉しいだけだ。
「いいんですね、それじゃあ」
「まあな。食えるのは事実だしな」
「有り難うございます、そう言ってくれると助かります」
 彼は今のイワノフの言葉に笑顔になった。
「僕達も」
「そんなに嬉しいのか」
「さっきも言いましたけれどここの話は聞いていました」
 彼はまたそれを言う。
「それでも予想していたよりずっと酷くて。どうしようかって思っていたんです」
「どうしようかか」
「僕達に何かできるかなって。けれどそれも」
「それも?」
「喜んでもらえるのならやりがいがありますね」
「そうだな」
 イワノフは熱いオートミールを口にした。その熱さと旨さを口の中で味わいながら答えるのであった。
「少なくとも自分では何もせずに他人を罵ってばかりの奴よりはずっといい」
「ですよね。僕もそう思います」
「けれどな、言っておくぞ」
 イワノフは言う。若者を斜めに見ながら。
「ここで食ったからといってどうにかなるわけでもない」
「どうにかなるわけでも?」
「そうだ。何もかもがなくなった」
 自分の国のことを述べる。わかっているとはわかっていてもあえて言うのだった。

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