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戦国異伝
第二百二話 関東入りその一
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                  第二百二話  関東入り
 織田家が上杉家を降しそのうえで関東に大軍を以て向かっていることは北条にもすぐに伝わった、氏康はその報を聞いて小田原でこう言った。
「まさか両方共ここまであっさりと倒すとはな」
「確かに激しい戦ですが」
「兵は失われていないとのことです」
 家臣達がその氏康に言う。
「そして意気軒昂なままです」
「関東に向かっています」
「そうか、織田の兵は二十万じゃな」
 氏康はその兵の数も問うた。
「そして徳川が一万じゃな」
「降した毛利、武田、上杉の兵は入れておりませぬ」
「それだけの兵です」
「何故かわかりませぬが」
「降した家の兵を入れぬには訳がある」
 氏康は信長のその意図を見抜いていた、それでその家臣にも答えたのだ。
「降したばかりでもまだ向かうところがある、それならじゃ」
「織田家だけで戦い勝つ必要があるからですか」
「その姿を見せてな」
 そのうえでだというのだ。
「心服させる為じゃ」
「そうした家の兵は加えずに」
「戦を続けているのですか」
「そうじゃ、それに毛利の兵は九州の大友等への抑えになる」
 織田家はまだ九州には兵を進めていない、そこにいる勢力とは今のところは縁がないがというのである。
「迂闊には動かせぬし武田の兵もこれまでは我等への抑えとなっておったし」
「上杉もですか」
「上杉も上杉で奥羽の最上等の抑えになる」
 越後と国境を接しているその家々の、というのだ。
「動かさずともその役があるからな」
「あの者達は動かさない」
「その意味でも」
「しかも後詰にもなっておるからな」
 この役目もあるからだというのだ。
「織田にはまだ兵があるとな」
「動かさずとも、ですか」
「あの者達は役に立っている」
「まだ従わぬところがあるにしても」
「その役目もあり」
「動かさぬのじゃ」
 心服させる為、そして備え及び後詰としてというのだ。
「動かさぬのじゃ」
「そういうことですか」
「だからあの三家の兵を動かさず、ですか」
「織田家はこちらに来る」
「左様ですか」
「そうじゃ、そしてその織田家が来る」
 氏康はあらためて言った。
「二十万以上の大軍がな」
「それに対して我等は六万」
「しかも佐竹や結城といった我等と敵対している関東の大名達も加わるかと」
「そうなれば我等はですな」
「危ういですな」
「まず言っておく、小田原は陥ちぬ」
 氏康はこのことから言った。
「この城は何をしようが陥ちぬ」
「はい、この城だけは」
「何があろうともですな」
「陥ちるものではない」
「その通りですな」
「しかしこの城だけではどうにもならぬ」 
 こうも言う氏康だった。
「小田原だけではな」

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