第四十一話 夜の熱気その十三
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「だから」
「天理教の女の人奇麗な人多いのか」
「そう思うけれどね」
「そういうことか」
「さて、何処に入るの?」
ここで言って来たのは菫だった、薊と向日葵の話が一段落したところで。
「それで」
「そうね、まずはここよ」
菖蒲は丁渡目の前にあるうどん屋を指差して言った。
「ここは何回か行ってるけれど」
「きつねうどん美味いんだな」
「ええ、この商店街で一番よ」
薊にこう太鼓判を押して話した。
「他のおうどんもだけれど」
「そうか、じゃあここに入ってか」
「まずはきつねうどん、そしてね」
「そして?」
「入口のところに一旦戻って」
既に通り過ぎている、しかしそれでもというのだ。
「天麩羅を食べましょう」
「ああ、天麩羅っていっても」
「そう、関西独特のね」
「はんぺんとかな」
「あれを食べましょう」
「あれ最初見てびっくりしたよ」
薊は菖蒲の誘いに唸った顔で返した。
「本当にさ」
「そうね。けれどああしたものもね」
「天麩羅なんだな」
「そうなの」
「ううん、最初何だよこれって思ったよ」
「薊ちゃん寮のおかず見てびっくりしてたわよね」
裕香も言って来た。
「あの天麩羅見て」
「なったよ、だってさ」
「天麩羅は」
「あの衣を付けて揚げたな」
「それだけだと思ってたのね」
「ああした練ったのってさ」
魚のすり身なりをだ。
「そういうのって見なかったからさ」
「関西だけなのね」
「そうだよ、関東にはないよ」
薊は裕香にそのことは断言した。
「あれも天麩羅なんだな」
「そうなの」
「あれは昔からあったのよ」
菊が薊に話す。
「あの天麩羅もね」
「そうなんだな」
「難波の時に織田作之助の話が出たけれど」
「自由軒の時な」
「ほら、夫婦善哉で」
その織田作之助の代表作だ、戦前の大阪の風俗がよくわかる名作であるがこの作品においてもというのだ。
「最初で」
「?最初?」
「ほら、おっさんはよごぼ天揚げてんかいなって」
「ああ、そういえば」
ここで薊も気付いた。
「そうしたはじまりだったな」
「年がら年中借金取りが来たって書いてあってね」
「そうだよな」
「そう、あの天麩羅がそうなのよ」
「そうだったんだな」
「戦前からあったのよ」
「本当に古いんだな」
薊は菊の話も聞いてしみじみとして述べた。
「あれって」
「ええ、そうなの」
「成程な、それでその天麩羅もか」
「大阪名物よ」
「面白い名物だよな」
薊は周りにここまで話してもらってからしみじみとして言った。
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