第四十一話 夜の熱気その十
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「下町って感じでいいのよね」
「ただ、大阪のそうしたところってな」
ここでまた言う薊だった。
「本当にじゃりん子チエだよな」
「薊ちゃんあの漫画よく読んでたの?」
「孤児院にあったんだよ」
「あっ、そうだったの」
「そうなんだよ、それで全巻読んでさ」
こう裕香に話すのだった。
「他の漫画も一杯あったけれど」
「あの漫画好きだったのね」
「面白かったからさ、寅さんとは違う下町で」
「神戸の下町ともね」
「神戸の下町は長田だよな」
「そう、あそこよ」
丁渡八条学園のある場所だ、八条学園のある八条町は長田区にあるのだ。その分長田区は神戸の中でかなり広くなっている。
「あそこがそうなの」
「神戸の下町か」
「だから食べものもね」
長田のそれもというのだ。
「所謂庶民のものっていうか」
「カレーとかな」
「すじ肉のね」
「あのすじ肉カレー美味いよな」
「そうでしょ、あれはあれでね」
「しかも安いからな」
ただしかなりじっくり煮込まないと柔らかくならない。すじ肉というものはそのことに気をつけないといけない。
「いいよな」
「あの匂いもね」
「慣れると美味いしな」
「大阪の自由軒のカレーとはまた違うの」
あのカレーはというのだ。
「またね」
「そうだよな」
「じゃあ今からね」
「ああ、住吉さんの次は」
「天下茶屋よ」
「大阪観光はまだ時間があるから」
「今日は天下茶屋で」
鈴蘭と黒蘭も言って来た。
「明日は明日でね」
「他の場所を回りましょう」
「それじゃあ明日は鶴橋辺りかしら」
菖蒲は今度はこの場所を話に出した。
「岸里や上本町ね」
「岸里もよね」
「そう、大阪の下町よ」
そこもだとだ、菖蒲は菫の言葉に答えた。
「あそこもね」
「大阪はその殆どが下町だから」
「あの辺りもなのよ」
西成や住吉だけが大阪の下町ではない、それこそ東京で言う都心部にあたる中央区や北区以外、それに高級住宅街の阿倍野区の一定部分以外は工業地帯かそうした下町なのだ。
それでだ、岸里の辺りもというのだ。
「平野もそうだけれど」
「いいな、それって」
薊は大阪のかなりの部分が下町と聞いてだ、微笑んでこう言った。
「全部じゃりん子チエか」
「そうでもないの」
「じゃあじゃりん子チエはこの辺りだけか」
「岸里や平野辺りはまた少し雰囲気が違うの」
「同じ大阪でもか」
「そうなの」
「横須賀でも地域で少しずつ違うのと一緒か」
横須賀と言っても海軍だけではない、他にも様々な要素がその中にあるのだ。
「そういうことか」
「そう、確かに下町の街だけれど」
「その下町ごとで違う」
「淀川区辺りでもまた違うから、鶴見や此花も」
「何か本当に色々なんだな」
「私
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