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清明と狐
1部分:第一章
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なことに誰もな」
「ふむ。それではですね」
 清明はそれを聞いて考える顔になった。そうしてまた述べた。
「それは邪なものではありません」
「そうではないのか」
「はい、間違いなく」
 確かな声で道長に答えた。
「それは幸いでした」
「土蜘蛛でもないのか」
「土蜘蛛でしたら道長様は今頃この世におられません」
「むっ」
 さしもの道長も今の言葉には声を失った。
「死んでおったか」
「はい。土蜘蛛ならば」
 それをまた言うのだった。
「ですからそれは幸いなことでした」
「しかし。それだとじゃ」
 道長はそれを聞いてあらためて言うのだった。
「あの灯りは。何じゃ」
「それは調べてみないとわかりません」
 清明も今の時点ではこう答えるしかなかった。
「申し訳ありませんが。ただ」
「ただ」
「それ程恐れるものではないのは確かです」
 こう道長に告げるのだった。
「私一人で充分でしょう」
「清明殿お一人でか」
「はい」
 また道長に答える。
「その通りです。私一人がいれば何の問題もありません」
「ではすぐに解決できるのだな」
「場所さえ教えて頂ければ」
 こくりと頷いて言う。
「すぐにでも」
「わかった。それではな」
「はい、教えて下さい」
 こうして道長にその林の場所が教えられた。その夜清明はまだ屋敷の中に留まっていた。そうして暗い屋敷の玄室の中で香を炊き何かを唱えていた。壁には何かの紋章や星の紋章が飾られている。それこそが陰陽師のものであった。

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