第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十一 〜城下での出会い〜
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あるまい?」
「そ、それはそうですが……」
チラチラと、横目で私を見る愛紗。
「……子は、相手がなくては持てませぬ」
「当然だな。では、伴侶次第、という事か?」
「ご、ご主人様! からかわないで下さい!」
耳まで赤くしたまま、愛紗は先に歩き出す。
「あっち、すげぇのやってるぜ」
「行ってみようぜ!」
そんな我らを、子供達が追い抜いていく。
「何かあったようだな。参るぞ」
「あ、ご、ご主人様!」
何かの商店前に、人だかりが出来ていた。
「うぉ〜、どっちもすげぇ!」
「俺は、ちっちゃい娘の方に賭けるぜ!」
「何言ってんだ、隣の姉ちゃんの方が勝つに決まってんだろ?」
……妙に、盛り上がっているようだが。
「負けないのだ! おっちゃん、ラーメン大盛り十杯と餃子百個追加なのだ!」
「へん! ならあたいは炒飯山盛りと麻婆豆腐十皿!」
しかも、聞き覚えのある声がするのだが。
「すまん。そこを通してくれ」
愛紗が人垣をかき分け、店の前に出る。
……やはり、か。
食堂の中で、鈴々と文醜が、皿や丼を山と積み上げていた。
「鈴々! 何をしているのだ!」
「お、愛紗とお兄ちゃんなのだ」
「いやぁ、張飛から、新規開店した飯店で、一番食った奴に賞金が出る企画やってるって聞かされてさ。大食いなら大陸一を自負するあたいとしては外せないと思って」
「大食いなら鈴々の方が上なのだ! だから、白黒つけている最中なのだ」
「……ハァ。全く、鈴々も鈴々だが、文醜殿も何を考えているのやら」
呆れた愛紗にもお構いなしに、二人は再び食べ始めている。
それにしても、尋常な量ではない。
「お待たせしました! 回鍋肉と青椒肉絲と酢豚、それから天津飯の大盛りです!」
二人の前に、更に料理が置かれる。
運んできたのは……む、鈴々と同じ年格好の少女のようだが。
しかも一度に運ぶとは……かなりの重量にも、平然としている。
「あ、お客様ですか? どうぞ、中へ」
私と愛紗に気付いたようで、声をかけてきた。
「い、いや、私は……」
「良いではないか、どうせ昼食を取るつもりであったのだ。邪魔するぞ」
「……わかりました。そうしましょう」
諦めたのか、愛紗も席に着いた。
「まだ、食べていますね……。どこにそんなに入るのか」
私と愛紗が食事を済ませても、二人の争いはまだ決着を見ていなかった。
「気の済むまで、続けさせるしかないな」
「でしょうね。鈴々だけならともかく、文醜殿まで絡んでいては」
また、溜息をつく愛紗。
「お水、如何ですか?」
件の少女が、水差しを手にやって来た。
「うむ。ところで、この店はお前のものか?」
「い、いいえ! 私は旅費を稼ぐのに、働かせていただいているだけですから
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