第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十一 〜城下での出会い〜
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ありません」
ギョウに着いた頃と比べると、幾分疲労が抜けたようだな。
「あの、遅くなりましたけど。先だっては、本当にありがとうございました」
「うむ」
「土方さんが救援に駆けつけてきていただけなかったら、と思うと……ゾッとします」
顔良は、頭を振った。
「しかし、如何に黄巾党が紛れ込んだとは申せ、袁紹殿の方が数で圧倒していた聞いているが?」
「……はい」
「それが、何故にあそこまで追い込まれたのだ? 訓練を積んだ兵を率いていれば、単純に力押しでも負けぬ……普通は、そう考えるな」
「そうですよね……。やっぱり、そう思われますよね?」
「ああ」
「うう……。麗羽さまと文ちゃんがいけないんですよ」
そう言って、顔良は片手を顔に置く。
「最初、賊軍の規模を聞いた時は、土方さんの仰る通り、これなら普通に勝てると思ったんです」
「だろうな」
「それで出陣したんですけど……。麗羽さまが、華麗に勝ちたい、って仰いまして」
華麗に勝つ、か。
……わからぬでもないが、戦に華麗さを求める時点で、根本的に破綻を来しているな。
「麗羽さま、何度か土方さんの戦いをご覧になっていたんですが。鮮やかに勝利を収めているのを見て、ご自分でもああしたいって」
「…………」
「それはいいんですが、その為の策とか……全然ないって仰ったんです」
……頭痛がしてきた。
「それだけじゃないんです。賊軍を見つけた途端、文ちゃんが勝手に突撃を始めちゃって」
「止めなかったのか?」
「勿論、止めようとしましたけど。文ちゃんが、敵を全部蹴散らしてくるって豪語して、止める間もなかったんです」
猪突猛進、我が軍なら無論、処罰ものだ。
「おまけに麗羽さまが、文ちゃんの後に続きなさいって……。でも賊軍は真っ正面からぶつかってくれる訳もなくて、それで……」
「翻弄されてただ疲弊させられ、被害だけが増えた……という事か」
「はい……」
まともな軍ではあり得ぬ事ばかりだ。
これでは、いくら相手が賊軍であろうと、勝利を得るのは至難の業。
「一つ聞くが」
「はい」
「袁紹に、実戦経験はあるのか? 無論、兵を率いての、という意味だが」
「殆ど、ないと言っていいと思います」
初陣に近いような状態で、しかも軍師もなしに指揮を執った訳か。
あれだけの名家なのだ、然るべき老練の将がついていても良さそうなものだが。
……『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』、か。
ともあれ、今のままでは袁紹は一生、軍功を立てる事は適わぬであろうな。
「顔良、袁紹殿の様子はどうか?」
「あ、はい。今度の事がだいぶ堪えたみたいで、今日になってやっと、起きられたみたいです」
「ふむ。……少し、話がしたいのだが」
「わかりました。では、麗羽さまに
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