第29話 気の強い女子ほど意外なものに弱い
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く見られなかった。
「‥‥‥‥‥無理はするなよ」
アスラはそれ以上言わなかった。
迅はその反対側の位置を歩いている。
万が一、ホークアイが力尽きてバランスを崩しても
両側にいる2人のどちらかが支えられるようにである。
「ジェーンちゃんは大丈夫?」
マリーは俺に声をかけてきた。
俺はホークアイのカッパを着ている。
代わりに彼は簡易的な雨具をシートで作って来ていた。
何というか、その点は申し訳なく感じた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥あぁ」
だが仕方ない。俺は現在、熱を出していた。
やや冷え込んだ山の中なので中に毛布を仕込んでいる。
高熱を出しているはずなのに、毛布まで着ているというのに、寒い。
しかし、周りに心配をかける程のものではない。
「俺も‥‥‥‥大丈夫だ」
だから、俺はこう答えた。
「‥‥‥苦しくなったらいつでも言ってね」
マリーはそう言って少し離れた。
そして、一刻も早く山を抜けるために歩みを早めた。
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
雨足は強くなるばかりだった。風も吹き荒れていた。
嵐の中、山道を進むのは自殺行為なのではないかと
誰かに問いたいほどだった。
「お‥‥‥‥俺―――――――――」
俺が言おうとしたその瞬間、絶望の時は訪れた。
ガシャアアァァアアァァァァァアァァアアアァァァアアンッッ!!!
強烈な閃光と共に、落雷が俺たちの前に落ちた。
と言っても、正確には視界的な意味での前なのだが。
距離的には随分と遠くに落ちたのだろう。
しかし、その時は俺にはほとんど記憶がなかった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥ッッ」
ギュウッ‥‥‥‥
俺は力一杯ホークアイの雨具を握った。
彼はそれで俺の異変に気付いたようだった。
「おい、どうしたんだよ?あ、もしかして雷が怖いってか?」
ホークアイは冗談のつもりで言ったようだが
俺の耳には全く入ってこなかった。
「ん?おい!どうしたんだよ!?」
俺は震えていた。ガクガクと。惨めに。無様に。
苦しい。息が出来ない。恐怖が全身を包み込むような感覚だった。
俺はホークアイの背から降ろされ、木にもたれかけられた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ‥‥‥‥‥」
俺の目からは涙が溢れんばかりにこぼれていた。
怖い。あの時の事が、今でも鮮明に、思い出された。
雨の日だけ表れる、俺の中の恐怖の情景。
「‥‥‥‥嫌だ‥‥‥‥‥助け‥‥‥‥‥‥‥誰か‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
俺は必死に手を伸ばしたが、それは何にも届かない。
そうして俺は再び暗闇の中に閉じ込められるのか。
ガシッ!
「‥‥なっ‥‥‥‥!‥
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