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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第113話 反撃
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……って、送りバントなんて言うサインが有ったのか、ウチのチームに? 俺の知っている範囲内でサイン……と言うか、作戦は『行け!』以外になかったような記憶しかないのですが。

 勢いを殺された打球は、一塁の動きの良い自称ランディくんとは別の方向。確か、九組の四番に座るサードの前に転がって行く。
 これは上手い! そもそも、サードと言うのは強い打球が来るから守備の上手い人間が守って居ると思われて居るが実は違う。むしろ、少々守備に難が有っても、それを打力で補えるのならそちらを優先する事の方が多いポジション。そう言う点に於いては、ウチの弓月さんなどは例外的に守備の上手いサードと言う事になる。

 予想通り、やや緩慢な動きから前進を開始する九組のサード。そもそも、打者は女の子。更に二番バッターと言う事から考えるのなら、サードの守備位置は通常よりも前に守るのがセオリー。野球とソフトボールのサードの守備位置の違いを知って居たのならこれは当然の処置。この辺りに気付く事のない相手なら、トータル的な守備力から言うと低いとしか言いようがない。
 しかし!
 しかし、このサード、捕ってからが早い! 手首を立てた状態。投げ終わった後に手で相手のグローブ――今回の場合はベースカバーに入ったセカンドのグローブを指す形。所謂、内野手投げと言う形を取っている。

 マズイか?

 ボールと打者走者の朝倉さんの走力との勝負! 最初のサードの動きから考えると、簡単に内野安打が稼げると思ったのですが、これはキワドイ勝負!
 しかし、それも一瞬。次の瞬間――
 いや、間違いない。一瞬、朝倉さんの足の方が早い! 

 セカンドのグラブをボールが叩く音よりも僅かに早いタイミングで一塁ベースを駆け抜ける朝倉さん。無暗に滑る事もなく駆け抜ける事を選択する辺り、彼女は冷静で状況も見えている。

 しかし!

「アウト!」

 しかし、無情にも響くアウトのコール。矢張り、間違いない。あまりにも露骨な場面は避けては居るが、きわどいタイミングは全てこちらの方に不利となる判定に成って居る。
 ノーアウト・ランナー一塁・二塁と、ワンナウト二塁では大きな差があるのですが……。

「ごめんね、少し小細工が過ぎたみたい」

 ネクストバッターズサークル内に居る俺に近付きながら、そう話し掛けて来る朝倉さん。言葉からは普段通りの彼女のまま。しかし、今現在の彼女が発して居る気は明らかに強い不満。
 確かに、審判に対して言いたい事は有るのは判りますが……。

「ナイスバント。後の事は俺に任せてくれたら良いで」

 そう話し掛けながら、回収して置いた彼女の使っていたバットを差し出す俺。そして、そのバットを受け取ろうと朝倉さんが近寄って来た時に、

「甲斐先生や、その他の女
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