第6章 流されて異界
第113話 反撃
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んで大きく踏み出して来るような無様な姿でもない。向かって来る投球に対して最短距離で出されるバット。
そして――
非常に素直で、更に流麗なフォームにより打ち返された白い球。
その白球を一直線に後ろに向かって追い続けるセンターのさつき。今ならば判る。一番バッターの打球の際に何故、彼女が追い付けなかったのか。
この場所は俺たちに取って死地。普段のさつきならば楽々と追い付いたはずのライトオーバーの当たりに追い付けず、先ほどのセカンドへのベースカバーの際に俺に掛かった異常な圧力などからもそれは明らか。
通常の……おそらくプロ野球の俊足選手クラスの脚力を示しながら打球を追い続けるさつき。但し、抜く手も見せずに剣圧を放つ事が出来るはずの彼女からすると、どう見ても敢えて常人レベルの能力に抑えているようにしか見えない動き。
最初に比べるとやや勢いの落ちて来た打球。そのボールに向け大きくジャンプを行う!
しかし!
しかし、大きなフォロースルーから生み出された打球の勢いは、そのさつきの能力を僅かに上回った!
無情にも再び外野の頭上を越えた打球はそのまま転々と遙か彼方へ向かって転がって行き――
先ほど打球に向け跳び込んださつきが再び立ち上がり、転がって居た打球に追い付いた時には、既にバッターランナーは三塁を回り……。
中継に入った……と言っても、ほぼセンターの定位置辺りにまで進んだ俺のトコロにボールが戻って来た時には、バッターランナーは既に本塁を駆け抜けていた。
☆★☆★☆
「みんな、未だ試合は始まったばかり。ここから追い上げて行きましょう」
かなり重い足取りで一塁側の急造ベンチに辿り着く俺たち。……と言っても、寒空の下、単にパイプ椅子を並べただけのベンチなのですが。せめて、ストーブとは言わないけど、暖を取る為の焚火でも用意して置いてくれたのなら有り難いのですが。
「そ、そうですよ、皆さん。未だ、たったの七点差じゃないですか。落ち込むのは早いですよ!」
最初に声を掛けてくれたのがスタジアムジャンパーに野球帽。ボトムに関しては流石に普段通りの女教師らしいシックなタイト・スカート姿の女性。どう見ても女子高校生。贔屓目に見ると成り立ての保母さん。しかし、その実態はこの一年六組の担任だと言う甲斐綾乃。そして、彼女に続いてやや自爆気味――流石に、七点差も有る事をわざわざ確認させる必要もないだろう、とは思うのですが、それでも言った本人。無個性の学校指定のコートやジャンパーに身を包んだ女生徒たちの中で一人目立ちまくっているチアガール姿の朝比奈さん自身には一切の悪意は存在していないので――
まして彼女自身は、先ほどの自分の言葉が選手の士気を下げた事に関しては気付
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