暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第113話 反撃
[4/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
う訳には行かないでしょう。
 普段通り、軽い感じで受け流す俺。しかし――

「こら、セカンド。何をぐずぐずしているのよ。さっさと自分の守備位置に就きなさい!」

 そもそも、その言葉は日本で一番有名な漁師さんの言葉じゃなくて、最期は立ち往生するお侍さんの言葉よ!
 すっかり、普段の調子を取り戻したハルヒがマウンドの上から怒鳴り始めた。……確かに、そう言う見方も有るかも知れない。

 その、俺としては耳に慣れた声を右から左へと聞き流し、それでも朝倉さんには、最初の時と同じように肩を竦めて見せてから、自らの守備位置へと歩み行く。
 そんな俺を、こちらは相変わらずの微苦笑を浮かべて答えに変える朝倉さん。

 自分の守備位置。相手が左バッター、更に強打者のようなので少し深め。そして、やや一二塁間寄りの守備位置に就く俺。軽く二、三回ジャンプをしてから緊張をほぐし、どんな打球にも対処出来る形を取る。
 それに……。
 それに、地獄だろうと、天国だろうと、簡単に試合を諦めて仕舞う訳にも行かないでしょう。

 何故ならば、この試合の勝敗はどうも俺自身の未来に影響が出て来そうですから。

 流石に盗塁された直後。ハルヒも一球目とは違い、完全にプレートを外した形でランナーを牽制。その彼女の動きに合わせて朝倉さんもセカンドランナーの後ろを通ってベースに入る仕草を行う。
 一応、この二人は野球に関しては素人のはず。故に、出来たとしてもここが限度でしょう。それにここまで出来たのなら問題は有りませんし。まして、ウカツにランナーを刺そうとしてもっとタイトなプレーを行えば、先ほどの審判のジャッジから考えると、ボークを宣告される可能性が大。

 この場面でこれ以上、傷口を広げても良い事は有りませんから。

 セットポジションから小さく足を上げて素早い……おそらく、テレビのプロ野球中継からの見様見マネのクイックモーションでの投球。
 ――って、ヤバい!
 普段の身体全体を使った大きな投球フォームとは違う、少し歪な形から投じられた直球はそれまでのソレと比べると格段に威力が落ち、更に、普段とは違う体重の乗り切らない投球フォームによる影響からか、リリース後のフォロースルーが上手く取れない事がその悪い状況に拍車を掛けた。

 つまり何が言いたいかと言うと――

 刹那、左バッターボックスに立つ自称ランディくんの瞳が光る。これは普段の彼女が投じる気の乗ったストレートなどではなく棒球だと気付いたと言う事。その直後、乾いた金属音を響かせて高く舞い上がる打球。
 そう。俺から見てもお手本にしたいようなほとんど動く事のない上半身。無暗矢鱈と大きなテイクバックを取って、反動で遠くに飛ばそうとするようなヘタクソの動きなどではなく、そして、ステップに関しても力
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ