第6章 流されて異界
第113話 反撃
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います。
流石にあれだけ大口を叩いた挙句、三球で軽く斬って取られたら、ベンチに帰る事さえ出来なく成りますから。
相変わらず、マウンドの上から苦笑に似た笑みを浮かべながらコチラを見る自称リチャードくん。その表面上に現われている表情は、苦労人風の彼に相応しい表情と万人から思われている事でしょう。
しかし、俺自身がヤツから感じているのは虚無。空間に開いた虚ろな影。生命体から感じる気では有り得ないモノ。
そうして……。
かなりゆっくりとしたモーションで、大きく振り被る自称リチャードくん。但し、今度はハルヒもスタートを切る事が出来ず。
その瞬間、世界が変わった。
そう、釘づけに成ったのだ。身体中の細胞と言う細胞が。神経と言う神経のすべてが汚水で洗われたような悪寒。魂自体が犯され、恐怖と絶望が思考を埋め尽くす。
全身が硬直したかのように動かず、視線は――
マウンドの上に立つ存在以外、見えるモノはない。
そう、あまりにも巨大なモノ。あまりにも壮絶なモノ。そして、あまりにも膨大なモノ以外には……。
卑小な自身が完全にそのすべてを理解する事が出来ない存在。ただ見つめているだけで穢され、侵されて行く精神。
このままでは――
しかし、そう、しかし!
「ちゃんとしなさい。あんた、必ずあたしを生還させるって約束したのでしょうが!」
黒々とうねる巨大な何モノかがすべてを支配したかと思われた世界の中に、雷鳴のように走る声。
刹那、酩酊し白濁した意識に、通常の判断力が戻る!
彼女が俺の内側にここまで影響を及ぼしている事に驚きながらも、しかし、精神すら支配され掛かっていた状況を瞬時に判断する。
アガレスの自動起動。同時に肉体強化。これで、ヤツラ……クトゥルフの邪神が創り出す死地でも、普段の俺の何分の一に過ぎない能力だとしても発揮出来る!
そして、神の発する威光。それも狂った神に等しい、ひれ伏して、暴れる神がただ過ぎ去るのを祈るしかない、……と考えさせられる、魂さえも穢す威光も己の精神力と、それ以外の外的な要因により完全に抑え込む。
始動はやや遅れたが、球自体はストレート。更に、アウトロー。少し、始動を遅らせても問題ない!
後ろに小さなテイクバック。力む事もなく、更に妙な上下動を伴った形でもない自然な形で出て来るバット。アウトローと言うコースも俺の長い腕の伸び切ったトコロでスイングに蓄えられたパワーをすべて打球に加えられると考えるのなら、こちらに有利な点としかならない。
軽い手ごたえ。しかし、瞳は間違いなくバットの芯でボールを捉えた瞬間を映し出した!
そして、テイクバックに比して、かなり大きなフォロースルー。バッティング練習でも見せた事のない綺麗なフォームから生
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