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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『追憶』
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入らないとって思っただけだ」
呵呵呵呵(かっかっかっか)、是非もなし」


 嬉しげにそれを呑み込んで、現れた刃金の螻蛄を引き連れて。一息にホットコーヒーを飲み干すと、風紀委員の活動の準備の為に『自宅に帰る』と師父に帰る事を伝えに。
 その背中に、嘲笑う視線が。燃え盛るような三つの眼差しが向いているのを、肌で感じつつ。


『……そォかよ、やっぱり忘れちまったのかァ。いや、ガキの戯言なンて信じて夢見てた私が馬鹿だったってェだけか』
『………………ははっ、忘れてた。結局──世の中なんて、こんなもんでしたねぇ』
「……………………」


 思い返す、二つの『諦め』の言葉。自分がそうさせた、嘲りの言葉だ。その無力、その浅はか。自嘲の余り、自決してしまいそうな程で。


「……?」


 探ったポケットに、違和感。取り出したのは────明滅する乳白色の宝珠と、有機的な銀色の鍵。その二つの『魔道具(アーティファクト)』に、甦る記憶がある。
 極彩色の閉じた世界に、黒金の太陽と白銀の満月。そして────嘲弄する悪意の塊、見えざる皆既日食か皆既月食。


「どうした、嚆矢?」
「…………(いや)、別に」


 それを、背後で牛乳を飲んでいる市媛に悟られぬよう。再びポケットに押し込んで、螻蛄のショゴスを外に向かわせ、バイク形態で待機させる。
 朝の日差しは既に、透明なものに。大好きな青の世界は既に消え、遠くに(そび)える『窓の無いビル』は揺るぎなく。


「……今日も暑くなりそうだな」


 見習いたいくらいに早起きの、蝉の鳴き声を聞きながら。八月二日の今日に、悪態を吐いたのだった。
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