第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『追憶』
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装甲《オフェンスアーマー》』を纏ったままで。
その右手を、此方に伸ばし────
「疑って超悪かったですね、次からの仕事も超宜しく頼みます────“回転流渦”」
「ッ………………………………」
彼のかつての『能力名』を口にして、嚆矢を拘束していた結束バンドを人差し指と親指だけで引き千切って。“兎脚の護符”と“輝く捩れ双角錐”を投げ渡して踵を返すと、ポケットに手を突っ込んで扉に向かう────
「ぎゃん!」
「さっさと超帰りますよ、フレンダ」
途中でテーブルに突っ伏したままの、フレンダが座っている椅子を彼女ごと蹴り転がして。
「……後、携帯の録音は消さないと超後悔する事になりますから」
「は、はい……」
有無を言わせぬ最愛の迫力に、狸寝入りを決め込んでいたらしいフレンダは女の子座りの状態で涙目だ。そのまま木扉を開いてベルを鳴らし、一瞥すらないままに最愛は出ていった。
その後を追うように、チラチラと何度も振り向きながらフレンダも。後には、嚆矢と市媛が残るのみ。
「…………………………」
それを見送り、漸くして。嚆矢は護符を首に掛けて懐中時計を懐に入れると、転がされていた椅子に座って。
その目の前のテーブルに、ソーサーに乗せられたカップ。中身は漆黒、芳しい芳香を放つホットコーヒー。
「いやはや、お疲れ様です」
「ローズさん……ありがとうございます」
「いいえ」
礼を告げて、師父の淹れてくれたコーヒーを啜る。無論、コーヒーに対する礼だけではない。その真意を過たず汲み取り、それでも何でもなさげに師父は厨房に引っ込んでいった。
温かなコーヒーの苦味が、舌を痺れさせるようだ。しかし、胸に蟠る『苦味』には遠く及ばず。
懐から取り出した煙草を銜え、火を点す。肺腑の奥まで目一杯に吸い込み────
「────ゲホッ、エホ……あ〜、そっか」
新生したばかりの肺腑には、刺激が強過ぎたらしい。盛大に咳き込んでしまい、そんな素人みたいな有り様に苦笑いしながら。
「何か思い出したのかのぅ?」
いつの間にか隣でトーストにハムとチーズ、目玉焼きを乗せたものを食んでいる市媛が問う。興味無さげに、しかし嘲笑うように。
それに嚆矢は嘲笑うように、しかし興味無さげに応えて。肩を竦めながら、フィルターまで吸いきった煙草を足下の影──ショゴスに向けて、投げ渡して。
「別に。これから女の子に会うんだし、風呂くらいには
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