第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『追憶』
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からない無表情で困惑する。先に述べた通り、『風紀委員である』事は公然の事実。“書庫”にも明記されていなければ、いざという時に不具合が生じる。
今はまさにその逆の不具合で首の皮が繋がったのだから文句はないが、理由の分からない百分の九九など、胡散臭くて仕方がない。
まるで、何か────自分の預かり知らぬところで、取り返しのつかないツケが貯まっているような。そんな不快感と焦燥とが、心を埋める。
「じゃあ、超質問といきますか……『暗闇の五月計画』との関わりと、黒夜海鳥との関係について」
「……………………」
「だんまり、は超賢いとは言えませんけどねェ。つまり、超言えねェ事があるってェ事になりますから」
思考する合間を黙秘と取ったか、最愛は瞳を更に鋭く尖らせて。飲み干した缶珈琲……スチール缶を、『窒素装甲』で握り潰しての恫喝を。
「……別に、話して困る事はない。だが────話す事がないのだから、どうしようもない。調べたなら分かるだろう、俺に八年より前の記憶はない」
「……………………」
「分かっているのは、『暗闇の五月計画』の被験体で暗部の掃除機だった事。そして、『暗闇の五月計画』の後の実験で────」
別に珍しくもない、暗部ではよくある話だ。『能力が脳のどの部位に宿るのか』を探す実験。それ以上も以下もない、ただただ事実を返す。
「それ以外の記憶は、物理的に…………脳味噌を誕生日のケーキみたく切り刻まれた際に、海馬ごと奪われた」
「──────」
じっとそれを聞いていた最愛は、一度目を瞑って。何か、酷く────
「……つまり、『覚えてない』と」
「ああ。あの黒夜とか言う娘にも、君にも悪いが…………全く、覚えがない」
「…………………………」
数時間前にも見た表情を。酷く、嚆矢の言葉に傷付いたような表情を──フードの下で浮かべて。
「………………ははっ、忘れてた。結局──世の中なんて、こんなもんでしたねぇ」
「………………………………」
一体、誰に向けてか。握り潰した空き缶をテーブルの上に置いて、彼女は一度、諦めたかのように嘲笑って。
立ち上がり、歩み寄ってくる。力を籠めればへし折れそうに華奢な体に、装甲車くらいなら破壊できる攻撃力と防御力を与える『|窒素
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