暁 〜小説投稿サイト〜
Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
瑞雲 イリデセント クラウド
脚本奏者
第25話 夜明け
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策無しの増税ラッシュですよ。今の経済破綻しかかったこの国でそれをやれば10年以内には国家が
債務不履行
(
デフォルト
)
となります―――。
基本的に財務省の役人には公僕という認識は皆無、自分たちが影の指導者であり如何に増税や地方分権を邪魔して自由に動かせる金を作るか……つまり、どれだけ金で動かせる人脈を作るかに始終します。
国の存亡なんて二の次どころか三の次です。」
更に付け加えるのなら財務省の殆どは法学部出身、その為わざわざアメリカに留学して経済学を学ぶも事実上アメリカの犬か、新自由主義というもう一つの左翼になってくる始末。
財務という国の心臓にアメリカの息が掛かっている為、日本は事実上従属国のままであると云える。
「
倫理崩壊
(
モラルハザード
)
甚だしいな。彼らには困ったものだよ……私が雅な世界に耽溺できるのはまだまだ遠い話となりそうだな。
斯のままでは国の行く先を憂いて夜も眠れそうにない。」
不敵な苦笑い等という何とも奇妙な表情でつぶやく斑鳩。
其れに対し、真壁助六郎は眉を寄せた。
「閣下、このような時にそのような戯言を仰られては困ります。今や日本は亡国の瀬戸際に立っているのです―――貴方のような人間にこそ、立って頂かなくては。」
「しかし、民は其れを望んでいない―――真壁、人々は絶望の中でしか英雄を必要とはしない。
未だ足りない、日本国民全員の目が覚めるような劇的な転機が無くては―――そしてその時になってから、既に手遅れでした……では遅い。」
すぅっと、苦笑いから開かれた斑鳩崇継の瞳に鋭利かつ冷徹な色が宿る。
口元は微笑みを崩してはいないが、目は笑っていない。
「……承知しました、ではその延命の為の段取りをつけておきます。」
「些事は任せた―――責任は全て俺が取る。」
「ははっ!!」
真壁が主に向かい拝命を承った。
その時だ―――こんこんと固いが軽い木をたたく音、扉をノックする音が響く。
「入れ。」
真壁の短い掛け声と共に戸が開かれ、一人の山吹を纏う女性士官が姿を現した―――藤原大尉である。
「閣下、例の横浜の件で内閣から出頭するとのように通達が。」
「来たか、さて手持ちの札で何処まで行けるか―――私の勝負運が試されるな。」
藤原女史の言葉にどこかギャンブラーのような言葉を零す斑鳩崇継。
其れに困った表情を浮かべるしかない藤原大尉。
「閣下……」
「戯言だ気にしないでくれ―――それより、例の計画はどうなっている?」
女誑しの顔で藤原大尉に笑いかける斑鳩が次に問うた。
「はっ、情報省のテコ入れで多少の沈静化は見せてはいますが着実と進みつつあります―――回避できる可能性はほぼ皆無かと」
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