暁 〜小説投稿サイト〜
Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
瑞雲 イリデセント クラウド
脚本奏者
第25話 夜明け
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、その為に負った傷はけじめの証明であり、無暗に消していい物ではないとも。

 彼は他人にも厳しいが、それ以上に自分の生き方に厳しい。
 誰よりも強く、誰よりも危険に、誰よりも果敢に戦い抜き、そして生き残る。

 強さへの渇望、自らを強者足らんとする気概。その輝きを信奉し、胸焦がれる自分がいる。


 彼を――失いたくない。離れたくない。
 この安らぎと貴さを手放したくない。

 自分が彼にしてやれる事は何だろう……誰かの装飾品の様に、ただ傍に在り彼の生き様を見届けるだけか?
 やがて訪れる不可避の大きな戦い。今のようなコップになみなみと注がれ、表面張力でどうにか零れないだけ水面(みなも)のような危うい均衡は何時の日か絶対に崩れる。
 そうなれば、あの本土上陸の悪夢の再来だ―――しかも今度は日本全土が危うい。辛うじて残っても北海道と樺太程度。
 その一連の地獄の何処かで、彼が命果てる確率は非常に高い。

(駄目だ―――そんなのは赦せない。ただ、見ているだけなんて出来るはずが無い…!)

 彼が生き残るために何が必要か―――それは最強の鎧と剣、そして騎馬。
 そして、敵の牙城を崩す槍。

(……まて、其れなら手に入れる手段が………ある!)

 唯依の脳裏に、先日巌谷から受けた命が浮かび上がるのだった。








「おはようございます。」

 目を覚ますと腕枕のまま布団に横なってこちらの顔を見つめていた唯依の顔が目に入った。

「ああ、おはよう。……なんだ起きていたのか。」
「起きていたか、じゃないですよ。目を覚ますなり人の唇奪って其の儘また寝ちゃうんですから。」

「……すまん」

 拗ねたように唇を尖らせる唯依にバツが悪くなり謝る。すると“くすり”と唯依が野花が風に揺れるように小さく笑いを零す

「なんで謝るんですか。―――忠亮さんは私に何時だってしてもいいんですよ。だって……その、め、夫婦(めおと)になるんですから」
「……確かに、そうかもしれんな。」

 少し気恥ずかしげながらも微笑む唯依につられて表情が緩む。そして其の儘、唯依に向け徐々に互いの顔の距離を縮めていく。
 唯依もまたそれを察し瞳を閉じた―――二人の唇が重なる。

 そして数瞬の後、唇が互いに名残惜しくも離れる。

「えへへ……なんだか嬉しいです。」
「そうだな。」

 嬉し恥ずかしと言った様子で唯依が笑う。この笑顔をずっと見ていたい、飽き果てる事なんぞ在りはしない。

 尚、その後の朝食で女中の山口に赤飯を出された唯依が赤面してどうにもならなかったのは更なる余談。







「―――閣下、彼奴の機体を初め零式4機がメーカーより納品されました。其れと長刀です
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