エピローグ:神話と勇者と聖剣と
神話と勇者と聖剣と
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のだ。
そう、もう何年も前に打ち壊された公園の跡地。その平野を、天宮兄妹と鈴ヶ原の《自在師》達が改装して作り上げた、一日限りの結婚式場。外界から隔離された、この場所。
その計画を陰斗から聞いた二年前から、ずっとそれを実行すると決めていた。
ここは、自分と琥珀が、最初に出会った場所だったのだから。
隣に立つ彼女は、初めて出会った時よりもずっと大人だ。金色掛かった、美しいその髪も少し伸びた。
彼女にふさわしい男に成れただろうか、と、時折不安に思う。けどきっと、上手くいくのだ。
そしていつか、彼女にまた、こう言ってやろう。
――――上手くいったから、それでいいじゃないか。
と。
「新郎新婦、汝らに、誓いの文言を問う」
陰斗が、問う。お前たちに、覚悟はあるのか、と。
「新婦。汝、己が夫を信じる願いとなるか。己が夫を包み込む透明な癒しとなるか。己が夫に勇気を与える者となるか。己が夫を導く星となるか。己が夫を永劫に待つ者となるか。己が夫を讃える者となるか。己が夫を、永劫己が夫と誓うか。
そして――――時には、己が夫と肩を並べて戦う姫君となりうるか。以上の全てを、誓うか?」
完全に我流なのだろう。聞いたこともない誓いの言葉ではあったが。
「誓います」
琥珀は、そんなこと気にしないわ、と言わんばかりに、答えた。
陰斗は満足げな表情を見せると、今度は清文を見た。
「新郎。汝、己が妻と過ごす時を許容できるか。己が妻を涙から救いだす輝きとなるか。己が妻に希望を与える者となるか。己が妻を守る力をもつか。己が妻を迎えに行く約束を果たせるか。己が妻を慈しむ者となるか。己が妻を、たとえ世界が変わっても愛せるか。
そして――――時には、己が妻をその身を掛けて守る勇者となりうるか。以上の全てを、誓え、我が友よ」
――――命令形かよ。
内心で苦笑しながらも、でも清文も答えるのだ。
「誓うよ。俺が琥珀を守る。約束だ、親友」
――――いいだろう。
友の口が、そう動いた気がした。しかしそれを音に出すことはなく、彼は次の段階へと式を進行する。
「では――――契りを果たすべく。新郎よ、汝が妻に口づけを」
その言葉に頷いて、清文は隣に体ごと向き直る。琥珀も、同様に。
彼女のベールを上げて、その顔を見つめる。ああ、なんと美しいのか。何と言うか、今なら彼女が女神だと言われてもたぶん信じられる。時々性格が苛烈で、素直じゃなくて、怒ると暴力振るって来たりする女神だけれど。
だけど――――
「琥珀。君のことを愛している――――結婚しよう」
「――――はい、私の勇者様」
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