エピローグ:神話と勇者と聖剣と
神話と勇者と聖剣と
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日は来ないかもしれないと、ずっと思っていた。
けれど、今。
此処に、その日が来ている。
求めても良いのだろうか、と、おぼろげながら不安に感じる。この身は既に人に在らざるモノと化している。今だって、気を一定ライン以下に緩めてしまえば、座っている椅子を破壊してしまうかも知れない。
これから先の生活で、妻となる彼女に迷惑をかけてしまうのではないか、と。
この腕に、彼女を抱きしめる権利はあるのか、と。
今更ながらに、疑心暗鬼になってきてしまうのだ。
「大丈夫だ、安心しろ」
ふと声をかけられて振り向けば、銀髪の青年がこちらを見て微笑んでいた。スーツや制服姿が目立つ中で、なぜか東洋風の儀礼服。しかし似合っていないかと言えばそんなことは全くなく、むしろ最初から『その服』と言う概念は、彼のために用意されていたのではないか、と思えるほどに極まっていた。
「ゲイザーさん……」
「お前はここまでの物語を勝ち抜いてきた。ならばこれまでの戦乱の歴史に幕を閉じ、新たな物語を求めても構わないだろう」
それは彼らしい、簡潔で、優しくて、的確なアドバイスだった。
すっと肩の荷が下りた気がした。
「……清文、用意はできたか?」
控室のドアを開けて、入ってきたのは京崎秋也だ。スリーピースは彼に良く似合う。恐らく、この場にいる誰よりも。
我が身の幸福を、自分の幸せのように喜んでくれる生涯唯一無二の親友に、
「ああ。大丈夫だ、うまくいく」
清文は、笑って答える。
すると秋也も苦笑して、
「そうか。行くぞ」
簡潔に、式場へと案内するのだった。
***
大きな姿見に映っている自分の姿は、どうにも違和感のぬぐえないモノだった。
纏っているドレスは純白。一説によればイギリスのヴィクトリア女王が、ドイツのアルバート公との婚約の際に使ったのが理由でブームとなり、以後、西洋風の結婚式ではほぼ必ず纏われるようになったというそれ。
銘を、『ウエディングドレス』と言う。生涯で纏うのは二度目、リアルで纏うのはこれが初めてだ。
「わぁ、似合ってますよ、琥珀さん」
どう反応した物かと迷っていた琥珀に、最初に声を掛けたのはハクナだった。何と言うか清楚な雰囲気の普段の彼女からは想像もつかない、「カクテルドレス?」と思わせるようなドレスを身に纏った…これが素だというのだから、『天然』と言うのは恐ろしい…彼女は、花が咲くような笑顔を浮かべてこちらに近づいてくる。
昔はその笑顔に嫉妬したものだが、今はそんなこと気にならない。今日の主役の片割れが、自分だと知っているから。
「あ、ありが
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