首無し麒麟と鳳凰と
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ぇ……おれが生き残って、悪龍が死ぬなんて。まあ、あの腹黒女は華佗の救いなんて跳ね除けただろうけど」
翠がそのまま大人びたような女――――馬騰は笑った。妖艶な笑みは何を思うか。
――“人は生きるままに生きて死ね。与えられた力を出し切り生き抜いて死ね。抗い足掻き生き狂え。オレにその甘美に研鑽された智謀の果実を喰らわせろ。人の人生は知で甘く毒を持つ”……いま思い出しても腹が立つ価値観だ、頭でっかちのクソ龍、頭だけの戦で勝ち逃げしやがって。
知略で戦っていた悪龍と、武勇で戦っていた馬騰。
違う部類ではあったが、互いに同じ時機を生き抜いた傑物にしか分かり得ない匂いがあった。
「全く、めんどうなことをしてくれる……華佗、わがままだけど、もう少しだけ……一緒にいてくれるかい? 滞在時の金銭はこれまで通り気にしなくていいし、手伝いも好きなだけ使っていい。それくらいさせてくれ」
「術後の経過も見たいしこの西涼で救う命もある。有り難く受けよう」
「ふふ……」
首を傾げる翠。彼女に分かり得ない言葉を放って、馬騰は喉を鳴らした。
――刺し違えてでも曹操を殺さないとこの乱世は終わらない……。おれが死んでも華佗が翠の殉死を止めてくれる。これでいい。
最後に残った旧き英傑は、滾る血に任せるままに、拳を固く握りしめた。
――陛下に忠義を捧げていても、曹操には従ってなんかやれない。あいつは漢を滅ぼす毒でしかない……悪龍や袁家と同じで。
窓の外を見やると、其処には蒼天から暖かな光が差し込んでいた。
――悪龍め……西涼を舐めんな。おれがお前の策、力で打ち壊してやるよ……この死にぞこないの命を対価に。
最終的に劉備が勝つと陛下は帝で居られなくなる……そうなればもう……おれが仕える漢は取り戻せない。
生きて行ける可能性よりも、彼女は戦いに身を窶す。
逆臣になると分かっていながらも、彼女は忠義を捧げた蒼天の空を望んでいた。
蒼天に忠を捧げ切った真月が敵に居るとも知らずに。
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