首無し麒麟と鳳凰と
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たいは姫の片腕だ。だけど戦場じゃアニキの剣になる。おっきな一撃を食らわせるとびっきりの大剣だ。んで、アニキは戦場を貫く長槍になってくれ」
合わされた拳がコツンと当たる。
発された言葉に対して、呆れと感嘆の綯い交ぜになった吐息が彼から漏れ出た。
「徐晃隊は剣と槍で戦ってんだぜ? かっちょいいバカ共みたいになれないあたい達……“もう一匹の首無し麒麟”はそれくらいが丁度いいって思うんだ」
マガイモノだ、と彼は猪々子に言っている。
だから彼女は、新しい徐晃隊に相応しいカタチを示してみた。
本物の黒麒麟が帰ってくるまでは、首無し麒麟で戦場を駆けよう、と。
そんな彼女の子供っぽさに、やれやれと降参の合図を一つ。
「……そんなら俺は槍でいいや」
「素直じゃねぇなぁ」
「ほっとけ。性分だ」
ふ……と秋斗は笑った。
「あくまで徐晃隊に拘るんだな」
「だーってさぁ? せっかく一緒に戦えるんだぜ? あたいだってかっちょよく“アレ”言いたいもん」
「……まあ、華琳と徐晃隊に許可は得たけどよ。徐晃隊九番隊って事で」
「ってかなんで八を飛ばして“九”なんだ?」
「でででですとろーいって感じで、修正が必要で、男と女で、“あたいってば最強ね”なんだよ」
「わけ分かんねぇ……?」
ただのゲン担ぎというか下らない拘り。
バカで最強な妖精の事や、実はオペレーターが敵だった最強の事など、猪々子は知らなくていいのだ。
そんな下らなくて楽しそうな会話に、雛里が咎めるように彼の胸に擦り寄った。
これからまた長い時間会えなくなるから、彼女は今出来る精一杯のわがままを彼に向ける。
起きてしまえばいいのにと思うが、自分から起きないなら何も言ったりしない。
「まあいいや。あとさアニキ。あたいの事は猪々子って呼べよ。ちゃんと自分の剣の名前呼ばないとダメだかんな?」
「……そうかい。ならお前も秋斗って呼べ。アニキは止めろ。アニキと呼ばれていいのは男気溢れ、溶岩のように熱い情熱を心に湧き立たせる本物の漢だけなんだ。それにな、これ以上周りに妹と勘違いさせるような女が増えるのはさすがにまずい」
「真名は慎んで受け取らせて貰う。でもアニキって呼ぶのは止めてやんない」
「あぁ?」
「ふっふっふ……嫌がることをするのが兵法なんだろ? だからあたいの選択は正しい!」
無茶苦茶だが、もうそれでいいよと彼は大きなため息を吐き出した。
チラと胸の前を見れば、雛里が見つめていた。
幾分、風が流れた。心地よくて清々しい、一陣の風が。
「……首無し麒麟は二匹。鳳凰の羽を持つ鳳統隊と、俺と猪々子が率いるマガイモノの“徐晃隊”。次の戦は地獄だな」
不敵な笑みを携えて、彼は前だけを向く。
新しい部隊は
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