首無し麒麟と鳳凰と
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なんだな?」
「俺の欲しい情報があったってのもあるが……概ねその通りだ」
「……」
じ……と彼女は彼を見つめた。起きているのかいないのか、雛里が少しだけ彼の服の裾を握りしめる。
「否定はしないよ。それに、アニキにはでっかい借りが出来てるし、あたいはあんたと一緒に戦うさ」
記憶を失ったのは聞いた。記憶を取り戻す為に純粋な情報を得たいのも理解している。
憧れた黒麒麟が今の秋斗と同じだと雛里や徐晃隊から聞いて、少しだけ落胆したが、麗羽の命を救って生きられるようにしてくれた事には変わりない。
負けでも良かった。ただ麗羽と斗詩という愛する者が生きてくれたら……それが猪々子の持つ欲望で願い。
「そっちも俺の為にしたことだ。借りなんかじゃねぇ、そんな気持ち持つんじゃねぇよ。お前は約束通りにただ従えばいい」
「へへっ……」
感謝を向けられることでは無いと、秋斗は言う。猪々子には、それこそ無駄だというのに。
「やだね。アニキはクソ野郎だからそう言うと思った。雛里の言う通り、そういうとこ嘘下手だな」
「……」
「郭図とあんまし変わんないと思うとこもあるけどさ、やっぱしあいつとは違うんだ。でっかいもんを見て戦ってるだけでアニキは誇りを持ってないわけじゃないもん。死ぬかもしれないような場所に、“知らない誰か”を助ける為に一人でも向かうバカなアニキは……好きだぜ?」
ニカッと男勝りな爽やかな笑顔に、秋斗はなんともいえないような顔で押し黙る。
哀しいというよりかは呆れ。お前は騙されているんだが、とは彼もさすがに言わない。
最後の言葉に雛里が僅かな反応を見せたが……秋斗は気付かない振りをする。
「なんでそんな簡単に信じるかね?」
「にしし……明が信じた、夕が信じた、徐晃隊が信じた、姫が信じた、雛里が信じた、曹操軍全部が信じた……そんであたいが信じてる。アニキは嫌われたいのかもしんないけど、根っこでは誰かの為にしか戦わない大バカ野郎だ」
「黒麒麟と違って俺の戦は最低だぞ? 騙すし侮辱するし切り捨てるし――――」
「バーカ! それで敵も味方も助かるようにしてるのはもうバレてんの! あたいはバカだし複雑な動きは出来ねぇけど、あたいがそうやって戦えばアニキの負担も減るから問題ないだろ?」
何を言っても無駄。
猪々子は秋斗を認めた。夕を助けようとして麗羽と斗詩を助け、徐晃隊にも信を置かれたから認めた。
誰かが信じる彼を信じて、自分が信じる彼を信じて……それだけで十分だった。
「お前……俺が顔良を殺せって言っても殺せるか?」
そんな彼女に有り得ない質問を投げる彼は、やはりいつも通りに馬鹿げている。
普通なら怒るところ……であっても、猪々子は間違えず、べーっと舌を出して笑う。
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