首無し麒麟と鳳凰と
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三つ。生きている三人の分。トクトクと注いで、残りを酒瓶ごと石碑の前に置き、ゆっくりと腰を下ろした。
雛里は彼の膝の上に、猪々子はその隣に座る。そうして……三人は杯を掲げた。
「……誇り高い英雄達の生き様に」
誰よりも英雄と呼ばれるべきなのは彼らだと、雛里は紡いだ。
「……あたいがなりたい先達に」
此れから彼の元で戦う約束を其処に、猪々子が誓った。
「……先に繋ぐお前らの想いに」
纏めて連れて行くと約束したから、秋斗が繋いだ。
一息で飲み干せば、熱いナニカが込み上げてくる。
秋斗の胸に悲哀は無かった。爽やかな風が頬を撫でて、戦場の雄叫びと、約束の二つ言葉が幻聴として耳に響く。
「「「乱世に華を、世に平穏を」」」
三人が同じ時機で声を上げた。徐晃隊にだけ受け継がれるその言葉で、彼らの為すべき事は示される。
とくとくと彼が石碑に酒を掛けていった。大地に染み込んで、彼らも飲めば、より綺麗な想いの華を咲かせてくれる気がしたから。
沈黙は苦にならない程に穏やかで、三人はそれぞれの想いを胸に、じっと石碑を見つめ続けた。
「……アニキ」
帰り道。疲れと安心から眠ってしまった雛里を乗せて月光の上、猪々子が声を掛けた。
「どうした、文醜」
並んだ彼女に首を向けて声を掛ける。
真っ直ぐな瞳は変わらず少し直視するには堪えるが、それでも秋斗は目を逸らさなかった。
「郭図を拷問して殺したって……ホントか?」
「……ああ」
問いかけるは嫌いな男の最期。
明がすると思っていた事を秋斗がしたのだ。其処に疑問を持つのは友達として当然。
一人だけ袁家征伐に参加させて貰えなかった彼女は、明とはあの後話していない。
「どうやって殺したか教えてやろうか?」
「うぇ、やめてくれ。ソレを教えて貰う事に何の意味があるんだよ」
「クク、違いない」
自分に思いつく限りの、ありとあらゆる手段を使った。皆までいう必要は無い。話しても気分が悪くだけだと互いに理解を置いている。
猪々子は袁家だ。明が表に出て来た連合よりも前は、戦中に情報を得る為に斗詩が汚れ役を買って出ていたことは知っているし協力もして来た。優しい斗詩が震えて帰ってくるのを慰めるのは彼女の役目であったのだから。
自白しない敵兵を追い詰めるなど戦では日常茶飯事。仕事を直接するか否かは上の人間次第ではあるが、どの軍も例外なく昏い部分は持っている。
彼女達が誇りを賭ける戦とは別で、不快に思いこそすれ、二枚看板とまで謳われる彼女はそういうモノも必要だと割り切っていた。
だからこそ戦では真っ直ぐに戦いたいと欲が出ていたのも一つではあるが。
「それが明の選んだ事
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