第七章
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「いい奴のふりをすることもな」
「そのこと自体がなのね」
「悪事を隠す為だからな」
「自分のその悪事を」
「だからな」
「それだけになのね」
「用心深いんだよ」
そうだというのだ。
「ああした奴はな」
「それが捕まったことは」
「公安も頑張ったな」
そうして福嶌の悪事の動かぬ証拠を掴んだというのだ。
「慎重にやったな」
「それで捕まえたから」
「よかったよ、議員にでもなられたらな」
「その権力利用してどんな悪事するかわからないし」
「それにだな」
「そう、それになのね」
「国会議員になると不逮捕特権も出来るからな」
このこともあってというのだ。
「逮捕するにしてもな」
「面倒なことになるわね」
「ああ、逮捕するにはな」
「国会で議員の失職とかの手続きも必要になって」
「そうした面倒なことになるからな」
「だからなのね」
「あいつが議員になる前に捕まってよかったよ」
本当にというのだ。
「心からそう思うよ」
「そうね、けれどね」
美和子は夫の話を聞きつつだ、ここでこんなことを言った。
「こうした悪い人ってね」
「善人のふりをしてその裏で悪事を働く奴だな」
「そうした人って絶対に正体がばれない?」
「最後の最後はな」
「そうなるわよね」
「俺達も捜査するしな」
牧野は笑ってだ、彼にこうも言った。
「それにな」
「それになのね」
「人は見てるしな、神様だってな」
「見ているのね」
「だから最後はわかるんだよ」
その悪事が、というのだ。
「それで捕まるんだよ」
「そういうことね」
「結局正体ってのはばれるんだよ」
牧野は達観した、遠くを見る目で妻に語った。
「それでなんだよ」
「捕まるのね」
「世の中ってのはそういうものだよ」
言葉も達観していた、その達観している言葉で彼は自分の妻に話した。今二人は遺書に夕食を食べているがそこで観ているテレビのニュースでだ。
丁渡福嶌のことが報道されていた、牧野はそのニュースも観つつ美和子にこんなことも言った。
「人間真面目に生きないとな」
「どんなに悪いことをばれない様にしてもね」
「ばれるからな」
「やっぱり真面目に生きることね」
「それが一番だよ」
「悪いことをせずにね」
こう福嶌についての報道を観つつ言うのだった、そして二人で温かい夕食を楽しんだのだった。
偽の高潔 完
2014・12・24
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