暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外23話『急転直下』
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彼よりも圧倒的な身体能力を持っている人間、ありとあらゆるハンデをものともせずに乗り越えられる意志を持った人間。そういった人種がいることを、エネルは知り得なかった。
 それが何よりも青海という世界でもまれたハントとの大きな差。
 けれど、空島の世界で生きてきたエネルからすればそんな差などわからない。なにせ知らないのだから。
 



 そう、何も知らない。
 だから、エネルはまだわかっていない。




「我は神なり!」

 本日何度目となるかもわからない言葉にしがみつき、無挙動に放つ。

「神の裁き!」

 今度はもうハントに神の裁きが当たったかどうかの確認はしない。どうせ当たらないことは、エネルもわかっている。技を放ったとほぼ同時、雷となって移動。
 そして「神の裁き!」空中からハントのいるであろう位置へと放った。かと思えばまた、すぐさま移動。

「神の裁き!」

 背後から。

「神の裁き!」

 右側から。

「神の裁き!」

 左側から。

「神の裁き!」

 また前方から。
 神の裁きの乱れ撃ち。
 いくらハントの見聞色が優れていても、どれだけ身体能力があっても雷の速度にはかなわない。かなうはずがない。

 放つ場所やタイミングを読まれるというのなら関係のないほどに何発も放つ。避けようのないほどの大きな規模の雷を、それはもう何発も。圧倒的に勝る速度でハントを仕留めるという作戦。
 いったいいくつ神の裁きを放っただろうか。
 周囲の森をなぎ倒し、流れる雲の川を分解させ、遠くにいる神兵やシャンディアを巻き込み、神の裁きがアッパーヤードに乱れ飛ぶ。

「はぁ……はぁ……はぁ」

 息を切らせて、エネルがその場に足を止めた。

「……これで片がついただろうが……ふむ、今ので随分と他を巻き込んでしまったようだが悪いことをしてしまったな、ヤハハハハハ」

 周囲を見渡して申し訳なさそうに吐き出された言葉とは裏腹に、実に満足げな顔で、マントラの網をエネルは張りなおす。

「派手にやりすぎたようだな、先ほどからの戦闘のせいでシャンディアの雑魚がここに来る……いや、もうすぐそこか。ヤハハ、まぁよかろう。まとめて葬って――」
「――先に俺を倒してからにしろよな、それ」
「っ!?」

 背後から突如として聞こえてきた声に、慌てて雷となって距離をとる。そのまま声の主を確認して「ば、ばかな……貴様っ!?」エネルの表情が歪んだ。

「だから言っただろ? 俺に勝てないって」

 一度も当たらなかったのだろう。
 平然とした顔で、ハントが胸を張る。
 その、どこか子供っぽさを思わせる態度が、神の裁きの乱れ撃ちを避けたという化け物じみた行為を為した人間の態度と
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