番外23話『急転直下』
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移動したエネルが悔しげに「私が雷ではないだと?」
「いや……だって――」
「――この力を見てもそれが言えるかっ!? 『稲妻』」
珊瑚のようにも見える一筋の雷がハントを襲う。
「聞いといていきなり攻撃とかずるくねっ!?」
話そうとしていたハントが慌てた様子で言葉を吐くよりも先に頭を下げて、まさにぎりぎり。寸前まであったハントの頭の位置をエネルの稲妻が通り過ぎた。避けられることは当然で、それこそがエネルの狙い。強引に頭を下ろしたせいでハントの姿勢が崩れている。
「神の裁き」
巨大な光線とすら感じてしまうほどの雷光がエネルの腕から解き放たれた。
これならば避けようがない。
「……っぶな」
ハントの声が聞こえた。
「な」
エネルから声が漏れる。
幽霊でも見ているかのような顔で、気付けば神の裁きを避けていたハントの姿を見つめて、それが幽霊でないことを思い出したのか「ばかな」と、ほぼ無自覚に言葉を落とした。その視線に気づいたハントは少しだけ自慢げに胸を張る。
「とある国で駆け引きがうまい人間にひどい目に遭わされたことがあるんだ。もうそう簡単に姿勢を崩されたりはしないさ」
それは一体誰に対しての言葉か。
エネルを見ているようで別の誰かをも見ているかのようにすら感じられるが、それ自体はエネルにとってはどうでもいい。
問題はまた避けられたという事実、それだけ。
今度こそ必勝。一瞬でもそう思ったせいでなおのことショックを受けて呆然とした表情を浮かべるエネルへと、ハントはやはり真面目な顔のまま呟く。
「確かにお前は強いと思う。見聞色の覇気……お前ら風に言うならマントラも鍛えてあるし、悪魔の実の力はしっかり研ぎ澄まされてるし、これまで筋力トレーニングもちゃんとしてきただろうって思えるぐらいに十分に力も強いってこともさっきお前の棒を受け流したときにわかった。けど――」
先ほど、エネルの棒を掌底で流した時のことを思い出すように左手を見つめながら、一度言葉を区切って、ハントは刃物のように鋭い言葉を突きつける。
「――お前じゃ俺に勝てない」
「っ!?」
エネルの表情が怒りに歪んだ。
それはどうしようもない差だった、と。
――……。
それを、ハントは内心で思う。
差はただただ環境で、突き詰めて言うならば運。
ゴロゴロの実の能力者になった時点で最強になってしまった空島の人間。エネルの住む世界、空島の世界で最強になっても驕らずに自己の研鑽をたゆまなかったエネルは確かに大したものだが、生まれた世界が空島だったから、育った世界が空島だったからこそ知りえない世界があった。
彼に負けず劣らずの自然系能力者、彼よりも優れた覇気の使い手、
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