第五章
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「物真似とは別にお笑いをしようかな」
「っていうと何だよ」
「何やるんだよ」
「漫才してもやっさんになるし」
その容姿故にだ、ついでに言えば声も似ている。流石に関西弁丸出しで話してはいないが。
「ここは落語をしようか」
「ああ、落語か」
「そっちをするのか」
「やっさんは落語はしなかったから」
彼はあくまで漫才師だった、落語は専門外だった。ボートレースはしていたが。
「そっちもしようかな」
「やっさんから離れて」
「そうしてか」
「やっぱり僕は僕だから」
それで、というのだ。
「やっさんじゃないから」
「まあな、それはな」
「御前が御前なのは確かだな」
「幾ら御前がやっさんにそっくりでもな」
「ひょっとしたら生まれ変わりかも知れないけれどな」
例え魂が同じにしてもというのだ。
「御前は御前だよ」
「やっさん自身じゃないよ」
「幾らそっくりでもひょっとしたら生まれ変わりかも知れなくてもな」
「御前は御前だよ」
「それだからだな」
「うん、物真似は物真似でして」
そしてというのだ。
「そちらもやるよ」
「御前自身として」
「そうするんだな」
「うん、そうしてみるよ」
こう言ってだった、佳史は実際に落語もはじめてみた。そうして落語もしてみてだ、納得している顔で言った。
「これはいいね」
「ああ、御前の落語いいよ」
「かなりいけてるよ」
「それはそれでな」
「いいよ」
周りにも太鼓判を押してもらった、そうしてだった。
彼は落語にも励みだ、こう言った。
「僕も僕としてやっていくよ」
「そうしてもいいな」
「物真似もいいけれどな」
「御前自身として落語をすることも」
「いいと思うぜ」
「それじゃあこのままやっていくよ」
佳史は笑顔で言ってだ、実際に落語もしていった。そのうえで彼自身の道も歩いていくのだった。落語のそれも。
そして実際に芸能事務所に入ってだ、落語家としてデビューした。そして物真似もしてそちらも好評だった、だが。
実家に帰った時に両親にだ、こう言ったのだった。
「やっさんみたいにはなれそうもないよ」
「ああ、生活か」
「収入のことね」
「ああ、無理だよ」
その収入はというのだ。
「何とか生活出来ているけれど」
「それでもだな」
「あれだけ儲けてはいないのね」
「浪費はしていないけれどね」
横山やすしの破天荒なそれをというのだ。
「あそこまではね」
「まああの人は天才だったからな」
「それは仕方ないわよ」
「まあそこはな」
「これから精進しなさい」
「うん、そうするよ」
お笑い芸人になってもこれからだった、彼のお笑い道は終わりがなかった。自分自身のことに気付いてプロになろうとも。
レプリカ
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